実を結んだ「セットプレー向上計画」
ついに今季18-19シーズンもフィナーレを迎えた欧州5大リーグ。出そろった各クラブのスタッツを見てみると、トッテナムとのチャンピオンズリーグ決勝を控えるリバプールが「セットプレー王」に輝いた。
今季の“レッズ”(リバプールの愛称)がセットプレーから挙げたゴール数は20に上り、昨季の11ゴールからほぼ倍増。プレミアリーグ優勝にはあと1歩及ばなかったものの、5大リーグ最多となる数字を記録した。
「より一貫性が必要だったから、セットプレーに注力することをシーズン当初に決めたんだ」
地元紙『Liverpool Echo』にこう語ったのはリバプールを指揮するユルゲン・クロップ監督だ。
「私たちにはそうそうたる選手たちがそろっているし、セットプレーやクロスボールを蹴る選手たちの才能にも疑いはないのに、そこから十分な数のゴールを挙げられていなかったんだ」
「だから、私たちはセットプレーにより力を入れたんだ。時間を増やすのではなく、練習方法を変えたんだよ」
安定した結果を残すためにセットプレーの改善に動き始めたクロップ。そこで一役買ったのは分析部門だったという。
「分析部門が改善案を提示してくれて、それをこなしていった。素晴らしい成果が伴ってくれたよ」
「やっているうちに、選手たちも練習を楽しむようになっていったんだ。最初はとてもそんな様子じゃなかったけど、大きな成果が出ているからね」
スローインを一変させた「専門コーチ」
こうした積み重ねが実を結び、セットプレーからの得点数をほぼ2倍にしたリバプールだが、力を入れているのは得点に直結するCKやFKだけではない。昨夏に加入した「スローイン専門コーチ」トーマス・グレネマルクの力を借りながら、クロップはスローインの改善にも取り組んでいる。
「トーマスが加わったことで私たちのスローインは一変したんだ! スローインと聞くとロングスローを放り込んで頭で押し込むように思われがちだけど、それは正確なイメージではないね」
「今は状況に応じて18通りのスローインを使い分けている。これだけのバリエーションを駆使してボールを確保するんだ。せっかくスローインを得たのに五分五分の状況が生まれていては意味がないからね」
分析部門、選手、スローイン専門コーチとチーム一丸で、短所を長所に変えつつあるリバプール。今週末に行われるCL決勝でも彼らのセットプレーに要注目だ。
Photo: Getty Images
Profile
足立 真俊
1996年生まれ。米ウィスコンシン大学でコミュニケーション学を専攻。卒業後は外資系OTAで働く傍ら、『フットボリスタ』を中心としたサッカーメディアで執筆・翻訳・編集経験を積む。2019年5月より同誌編集部の一員に。プロフィール写真は本人。Twitter:@fantaglandista