マンチェスター・シティとリバプールが異次元レベルの優勝争いを繰り広げた今季のプレミアリーグ。それを受けて、選手投票によって決まる年間ベストイレブンである「PFAチーム・オブ・ザ・イヤー」も両チームの選手で埋め尽くされた。
シティからはGKエデルソン、DFラポルテ、MFフェルナンジーニョ、ベルナルド・シルバ、FWスターリング、アグエロの6選手が選ばれ、リバプールからはPFA年間最優秀選手に輝いたDFファン・ダイクと、ロバートソン&アレクサンダー・アーノルドのサイドバックコンビ、そしてFWマネの4人が選出。この2チーム以外から選ばれたのはポグバ(マンチェスター・ユナイテッド)だけだった。
おそらく「次点」だった選手も、アザール(チェルシー)やオーバメヤン(アーセナル)、ソン・フンミン(トッテナム)といったビッグ6の選手たちだったはずである。シーズンを通して振り返ればいくつかの印象的な番狂わせもあったものの、総合的に見ればプレミアの6強とその他14チームの間には、やはり大きな溝がある。
とはいえ、ビッグ6以外のチームにも、それぞれ輝きを放って大きく評価を上げたプレーヤーや、サポーターを大いに楽しませたヒーローは数多くいた。そんな選手たちをピックアップして“裏アワード”ともいえる記事を掲載したのが、英『スカイスポーツ』だった。同メディアが「1クラブにつき1人まで」というルールの下で選出した「ビッグ6外のベストイレブン」を紹介しよう。
ヘディング王に、最多チャンスメークのSB
まず守備陣は、GKにウェストハムの年間最優秀選手に輝いたルーカス・ファビアンスキ、最終ラインは右からアーロン・ワン・ビサカ(クリスタルパレス)、シェーン・ダフィー(ブライトン)、ファビアン・シェア(ニューカッスル)、ルカ・ディニュ(エバートン)だ。
ワン・ビサカの右SBはレスターのリカルド・ペレイラやウォルバーハンプトンのマット・ドハーティなど今季“豊作”だったが、スカイスポーツはDFで最多タックルをマークし、ほとんどデュエルに負けなかった彼のDFとしての能力を高く評価した。
屈強なダフィーはリーグで最もヘッドによるクリアが多かった(170回)選手で、シュートブロック数(47回)もリーグ3位、またDFの最多得点者(5得点)でもあった。
ニューカッスルはシェアが先発しなかった試合は16試合でわずか1勝だったが、逆に先発すれば22試合で勝ち点37ポイント獲得と、チームに与える影響力が大きかった。
また左SBのディニュはプレミア初挑戦ながらチャンスメーク数がDFのリーグ最多をマークし、ボックス外から4ゴールを決めるなど攻撃面での貢献が光った。
スモールクラブの働き者たち
MFは3枚で、アシュリー・ウェストウッド(バーンリー)、エティエン・キャプエ(ワトフォード)、ジョアン・モウチーニョ(ウルブズ)が選ばれた。
勤勉なウェストウッドは絶えずタックルを繰り返しつつもチーム最多の7アシストをマークしたことが評価され、クラブ年間最優秀選手に。キャプエはまさに“縁の下の力持ち”で、同僚のドゥクレが思い切った攻撃参加で注目を集めた影で汚れ仕事を全うし、リーグ屈指のタックラーとして認められた。ポルトガル代表のモウチーニョもまた、チームの最多タックル、最多パス、最多チャンスメーク、最多アシストをマークするさすがのクオリティーでウルブズの躍進を支えた。
「監督交代ブースト」で飛躍した2選手
最後にFWは、ネイサン・レドモンド(サウサンプトン)、ライアン・フレイザー(ボーンマス)、そしてジェイミー・バーディー(レスター)の3選手。
果敢なドリブルが光ったレドモンドは、シーズン途中で監督がハーゼンヒュットルに代わってから6ゴール4アシストと奮起。また「ファイナルサードでのボール奪取数」がチェルシーのカンテに次いで多かったというデータも。
ボーンマスでブレークしたフレイザーは、7ゴールを決めただけでなく、アザール(15)に次ぐリーグ2位の14アシストをマーク。チーム最高のチャンスメーカーとして大いにファンを盛り上げた。
そしてバーディーは、やっぱりレスターの英雄だった。リーグ5位、6強以外のクラブでは最多となる18ゴールを挙げた韋駄天ストライカーは、とりわけ2月にロジャーズ監督が就任し、指揮官が「レスターのスアレスになってもらう」と宣言してからは期待に違わぬ活躍ぶりで10戦9発。4月にはプレミアの月間最優秀選手に輝くなど、終盤戦の充実は目を見張るものがあった。
シーンを賑わせるのは、タイトルやチャンピオンズリーグ出場権を争うビッグクラブの選手たちかもしれない。だが、彼らスモールクラブの英雄たちにも、それぞれのストーリーがあり、矜持がある。彼らの活躍もまた、プレミアリーグを盛り上げる大きな要素だ。
Photos: Getty Images
Profile
寺沢 薫
1984年生まれ。『ワールドサッカーグラフィック』編集部を経て、2006年からスポーツコメンテイター西岡明彦が代表を務めるスポーツメディア専門集団『フットメディア』に所属。編集、翻訳をメインに『スポーツナビ』や『footballista』『Number』など各媒体に寄稿するかたわら、『J SPORTS』のプレミアリーグ中継製作にも携わった。