マンチェスター・シティの選手がバービー人形のモデルになって「言葉が出ない」と感動した。
女子サッカー界の新たな顔
今年65周年を迎えた『バービー』人形は、それを記念して世界中のアスリート9名をモデルにした人形を発表した。そのうちの1人がマンチェスター・シティの女子チームに所属するオーストラリア女子代表FWメアリー・ファウラー(21歳)だ。
ファウラーは母国のクラブで活躍した後、フランスのモンペリエを経て、2022年にシティに加入した。今季はFA女子スーパーリーグで1試合を除く全試合に出場し、チェルシーと熾烈な優勝争いを演じた。最終的に同ポイントで並ぶも、得失点差で一歩及ばずに8シーズンぶりのリーグ制覇を逃したが、最後までイングランド女子フットボール界を盛り上げた。
アイルランド出身の父とパプアニューギニア出身の母の間に生まれたファウラーが一躍有名になったのは6年前。2018年に15歳162日の若さでオーストラリア代表デビューを飾ると、16歳で2019年女子ワールドカップのメンバーにも選出された。その後も快進撃は続き、2021年の東京五輪で準々決勝の延長戦で決勝ゴールを決めると、母国開催となった昨年の女子W杯ではチームを4位に導いた。
昨年の女子W杯の初戦は、彼女にとって特別なゲームだった。ケガで欠場した絶対的エースのFWサム・カーの代わりにチームの攻撃を牽引し、“所縁”のあるチームと対戦したのだ。その相手というのが、父の母国であり、彼女の姉も兄も年代別代表に選ばれた経験のあるアイルランドだった。「オーストラリア代表のユニフォームを着られてうれしいけど、アイルランドにも繋がりを感じる」と語ったファウラーは、女子サッカー界の新たな顔となりつつある選手だ。
ピッチでの姿を忠実に再現
その証拠に、今回バービー人形のモデルに選ばれた9名の女子アスリートはいずれも各界の著名選手ばかり。同じ女子サッカー選手では、代表戦の世界最多記録となる「190ゴール」を叩き出した元カナダ代表FWクリスティン・シンクレア(40歳)だ。さらにテニス界のレジェンドであるビーナス・ウィリアムズ、東京五輪の体操競技(跳馬)で金メダルを獲得したブラジルのレベッカ・アンドラーデ、リオ五輪のボクシング競技の金メダリストであるフランスのエステル・モッセリーなどが名を連ねる。
過去にはテニス選手の大坂なおみ(26歳)などもモデルとなったバービー人形について「言葉が出ない」と語ったファウラー。「これまで多くの偉大な女性たちがバービー人形のモデルになってきたので、まさか自分がその1人になるなんて考えもしなかった」と心底喜んだ。
彼女の人形は半袖に手袋というファウラーらしい姿が再現されている。彼女はGKではないが、昨年の女子W杯で黒い手袋を着けてプレーして注目を集めた。「自分が最も自信を持てる姿をバービー人形にしてもらいたかった。それがピッチ上でプレーしている時。子どもたちにポジティブな影響を与え、彼女たちが私の姿を真似してくれたら特別なこと。ちゃんと私のバブルブレイド(髪型)、手袋、スパイクも再現されているしね」
今夏のパリ五輪ではグループCのなでしこジャパンだけでなく、グループBに入ったオーストラリア代表の若きエース、メアリー・ファウラーにも注目したい。
Photo: Getty Images
Profile
田島 大
埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。