先日、イングランドのノンリーグのクラブが記録的な連勝を見せたという。
不満をぶちまけるプレミア指揮官たち
シーズン終盤のこの時期は、過密日程を強いられるクラブも少なくない。プレミアリーグでも複数の指揮官が日程について不満をぶちまけている。マンチェスター・シティのペップ・グアルディオラ監督は先月のFAカップ準決勝の日程について「許されない」と激怒した。シティはPK戦の末にレアル・マドリーに敗れたUEFAチャンピオンズリーグ準々決勝2ndレグの3日後にチェルシーと戦わせられたのだ。FAカップ準決勝の2試合は2日間に渡って開催されるため、事前にシティの試合を土曜日ではなく日曜日に組むことも可能だった。中2日の大一番を何とか制したペップは「Rマドリーとの120分間の激闘の後だ。FAカップが特別なのは分かるが、選手の健康状態を考えると理解できない。不可能だ」と漏らした。
アーセナルの指揮官も同調する。「ペップや私だけの問題ではない。選手の身体の話なんだ。今の状況は正しくない。選手を守るために話し合うべきだ」とミケル・アルテタ監督は訴えた。今季の欧州カップ戦で、イングランド勢は計5チームも8強まで勝ち上がった。しかし、UEFAヨーロッパ・カンファレンスリーグのアストンビラを除いた4チーム(マンチェスターC、アーセナル、リバプール、ウェストハム)は準々決勝で姿を消しており、勝ち上がったアストンビラもオリンピアコスとの準決勝1stレグを2-4で落として追い込まれている。この現状について、リバプールのユルゲン・クロップ監督は無慈悲なプレミアリーグのスケジュールに原因があると主張した。
「イングランド勢はすべて精彩を欠いたのか? アタランタ戦での我われはそうだったかもしれない。しかし、私はたくさんサッカーを見ており、プレミアリーグは世界最高のリーグなんだ。決して過大評価されていない。選手たちの過労が問題なんだ」
そしてクロップ監督はプレミアリーグのカード選択権を持つ放送局について「好きなチャンネルだが、もう二度と見ることはない」と批判し、放送局は「搾り取るのではなく、再びフットボールのパートナーになるべきだ。プレミアリーグを去る老人からのアドバイスさ」と語った。
10日間で6試合を戦った9部クラブ
3~4日に1試合のペースで連戦をこなす一流クラブは、1日どころか数時間でさえ日程に敏感だ。世界最高峰の戦いを演じているのだから当然と言えば当然だが、そんな彼らにとって耳の痛い話がある。レベルが違うとはいえ、イングランド9部リーグで異様な過密日程をこなしたクラブがあるというのだ。イングランド北西部の地域リーグに所属するチャーノック・リチャードは、10日間で6試合も戦ったという。
悪天候などで順延された試合の影響もあり、彼らは4月18日から超過密日程を強いられた。しかも、彼らはこの6連戦を勝ち続けたのである。4月18日の6-0の大勝を皮切りに、20日に2-1、22日に5-1、23日に2-0、25日に1-0、27日に2-0と6戦全勝。しかも最後は6日間で4試合という悪魔的スケジュールを乗り越え、ぐんぐん順位を上げて昇格プレーオフに進出する4位に入ったのだ。
彼らはセミプロチームのため、大半の選手は別の仕事とサッカーを両立している。結局、4月30日に行われたプレーオフ準決勝でベリーに0-1で敗れて昇格を逃すことになったが、チームを率いるライアン・ドネラン監督は『BBCラジオ』にて「誇らしい」と選手たちを称えた。
「選手たちは毎晩のように戦ってくれた。2日連続の試合もあり、彼らはフィジオに軽く足をマッサージしてもらって何とか足を動かした。ほぼ毎試合、同じメンバーだしね。選手たちは本当に信じられないことをした。とても誇らしいよ」
果たしてプレミアリーグの日程問題は改善されるのか。 来季以降のスケジュールを見守りたい。
Photo: Getty Images
Profile
田島 大
埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。