NEWS

いよいよ実現か。ムバッペ移籍でもたらされるメリットとデメリット

2024.02.21

 キリアン・ムバッペが契約更新をしない、というニュースがパリから届いて1週間、スペインでは、すでに契約書にサインをしたとして具体的な数字まで報道されている。それによると、契約期間は5年間で年俸は1400万ユーロ(約22億6890万円)。パリ・サンジェルマンでの年俸が3500万ユーロ(約56億7230万円)と言われているので、半額にも満たない。契約謝礼金は4000万ユーロ(約64億8260万円)で、これもPSGが契約更新時に約束していた9000万ユーロ(約145億8590万円)の半額以下だ。

2年前に約束を反故

 ムバッペは2022年にレアル・マドリーとの仮契約を反故にした過去がある。

 反故にしたのは、エマニュエル・マクロン仏大統領から直接説得された他に、当時スポーツ史上最高額の契約金(その後、大谷翔平に抜かれる)を提示されたからだった。ちなみにあの時、3年契約を匂わす「2025」のユニフォームを着て発表を行ったのはナセル・アル・ケライフィ会長の策略で、実際には2年契約+1年オプションだったのは今回明らかになった通りだ。

 獲得を確信してメディアに吹聴していたフロレンティーノ・ペレス会長の面目は潰れ、金に目がくらんで約束を破ったムバッペは「裏切り者」呼ばわりされて評判はガタ落ち。同時期にビニシウス・ジュニオールが台頭してきたこともあり、ポジションが重なるムバッペ不要論さえ出ていた。

「来るなら来てもいい」に変化

 そんな中、今回ムバッペが来るとしたら傷付いたRマドリーのプライドを回復することが必要だった。具体的には、損をしてでも来る、という本人の意思表示である。今回の割安な契約条件は、この2年間で「ぜひ来てください」という姿勢から「来るなら来てもよい」に変わったことの反映だろう。

 ムバッペ獲得は、久々の大物の到来と歓迎されている。クリスティアーノ・ロナウドが去り、リオネル・メッシが去り、国産タレントたちはプレミアリーグに引き抜かれることが続いていた。「我われのリーグはよりコンペティティブになり、成長を助けてくれるだろう」(ラ・リーガのハビエル・テバス会長)。リーグの注目度と価値が上がることに、メディアや他クラブのフロントや監督、選手が異議を唱えるはずがない。

 唯一、頭を抱えているのはカルロ・アンチェロッティ監督だろう。ムバッペとビニシウス、ロドリゴ、ジュード・ベリンガム、ホセル、ブラヒム・ディアスをどう共存させるのか。

 「[4-1-5]にすれば解決!」なんて気楽な声も出ているが、それでは攻守バランスを無視してロナウド、ルイス・フィーゴ、ジネディーヌ・ジダン、ラウール・ゴンサレス、デイビッド・ベッカムを並べて、結局、無冠→フロレンティーノ会長辞任に終わった第1次銀河系軍団の二の舞になりかねない。


Photo: Getty Images

footballista MEMBERSHIP

TAG

カルロ・アンチェロッティキリアン・ムバッペナセル・アル・ケライフィパリ・サンジェルマンビニシウス・ジュニオールフロレンティーノ・ペレス

Profile

木村 浩嗣

編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。

関連記事

RANKING

関連記事