ドバイで開かれているFIFAビーチサッカーワールドカップはグループステージの佳境を迎えている。
初優勝を目指す日本代表は、グループステージ初戦のコロンビア戦に勝利するも、続く第2戦ではベラルーシに1-3の敗戦を喫して1勝1敗。決勝トーナメント進出をかけ、2月20日(日本時間24:30)にアフリカ王者セネガルと対戦する。
日本はビーチサッカーの強豪国だ。過去2大会はベスト4に入っており、前回の2021年大会は初めてファイナルまで勝ち上がるも、ロシアの前に屈して栄冠を逃した。その3年前の大会において、日本が準決勝で倒した相手がセネガルなのだ。そのためセネガルは、今大会の組み合わせが決まった瞬間から、日本戦を心待ちにしてきたという。
主力を欠き、日本に敗れる
セネガルを率いるママドゥ・ディアロ監督(52歳)は、日本との準決勝を忘れていない。現役時代はサッカー選手としてセネガル代表でも活躍したディアロは、現役引退後にビーチサッカーに転向。何もしないで過ごすのは嫌だったため、友達たちとビーチでサッカーをするようになり、ビーチサッカーの魅力に取りつかれていったという。
攻守が目まぐるしく変わるビーチサッカーは「退屈な時間がない」そうで「フィジカル、テクニック、そして精神面が試される。砂の上では嘘がつけないんだ」とディアロ監督は『FIFA.com』のインタビューで語っている。
こうして本格的に砂上でプレーし始めたディアロは、2007年のビーチサッカーワールドカップに選手として出場。その後は指導者となり、前回の2021年大会はアシスタントコーチとして参加していたのである。
3年前、セネガルは順調にグループステージを突破すると、準々決勝では優勝候補のブラジルを延長戦の末に撃破。初めてベスト4進出を果たすも、死闘の代償は大きく、累積警告により準決勝の日本戦では主力を3名も出場停止で欠いた。そして2-5で敗れ去り、3位決定戦でもスイスの前に涙を飲んだ。「あの敗戦は、なかなか癒えない傷跡だったよ」とディアロ監督は振り返る。
勝ったチームが決勝トーナメント進出
監督と同じように今回の日本戦に闘志を燃やすのが、主将を務めるGKアル・セイニ・エンディアイェ(34歳)である。今大会のグループステージの組み合わせについて聞かれると「死のグループだと思う」と語ったあとで「真っ先に思い浮かぶ言葉はリベンジ」と言い放った。
セネガルが出場したビーチサッカーワールドカップ全9大会に出場している190cmの守護神は、3年前にやり残したことがある。日本戦で出場停止となった3名のうちの1人が彼なのだ。スタンドからチームを見守るしかなかったエンディアイェは「今でもあの試合の映像を見る気になれない。まだ敗戦を消化しきれていないんだ。私は主将の役目を果たせず、仲間を見捨ててしまった気になる」と自責の念に駆られている。
今大会、日本と同じくセネガルも「1勝1敗の勝ち点3」で運命の第3戦を迎える。得失点差の関係上、現在はセネガルが2位、日本が3位となっているが、ビーチサッカーは完全決着制。引き分けはなく、グループステージでも同点の場合は延長戦、そしてPK戦で勝敗を決める。そのため、勝ったチームが決勝トーナメントに駒を進める待ったなしの大一番なのだ。
果たしてセネガルが3年前のリベンジを果たすのか、それとも初優勝を目指す日本が返り討ちにするのか。ベスト8の椅子をかけたグループステージ最終戦から目が離せない。
Photo: Getty Images
Profile
田島 大
埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。