ノッティンガム・フォレストのFWクリス・ウッド(32歳)のハットトリックが世界中で話題になっているようだ。ニュージーランド出身のストライカーは、これまで数名しか達成していない快挙を成し遂げたのである。
ニュージーランドでは特別な存在
ウッドは、12月26日のニューカッスル戦(3-1)で前半の追加タイムに同点ゴールを奪うと、後半に入ってさらに2ゴール。敵地で見事にハットトリックを達成し、チームを8試合ぶりの勝利に導いた。先日、監督を交代したばかりのフォレストはヌーノ・エスピリト・サント新体制での初勝利。試合後にヌーノ監督は「ウッドが素晴らしい試合をしてくれた。2点目など美しかった。ゴール前で冷静だったしね。今日のウッドの仕事に『ありがとう』と言いたい。彼には才能があるので、またやってくれるはずだ」とハットトリックのストライカーに感謝を述べた。
『BBC』ラジオでも「セントジェームズ・パークにサンタクロースが来てくれた!」とフォレストのファンは大盛り上がり。そしてウッドについては、あの世界最高プレーヤーの名前を出して絶賛した。「これまで我われファンは、ウッドのことを“deadwood(デッドウッド=不要なもの)”と呼んでいたが、今日は凄かった。あの足技とスピードは、もしロナウドが同じようなゴールを決めていたら絶賛されたはずだ」
ニュージーランド代表のキャプテンを務めるウッドは、同国のサッカー界にとって特別な存在だ。2年前にはニュージーランド人として初めてプレミアリーグの舞台でハットトリックを達成して歴史の扉を開いた。そして今回のハットトリックも特別なものとなった。フォレストの選手としては1996年のFWケビン・キャンベルに次いで史上2人目のハットトリック。さらに、英国の休日である12月26日のボクシングデーにハットトリックを達成したのは史上7人目。これまで6名はティエリ・アンリ、ケビン・フィリップス、ロビー・ファウラー、ディミタール・ベルバトフ、ガレス・ベイル、ハリー・ケインという世界的プレーヤーたちだ。
プレミア史上4人目の快挙を達成
それだけではない。これまでいくつもクラブを渡り歩いてきたウッドにとって、ニューカッスルは今年1月まで所属していた古巣クラブ。ニューカッスルではリーグ戦35試合で4ゴールに留まったウッドだが、フォレストでは今季既に7ゴールを叩き出している。プレミアで古巣相手にハットトリックを決めたのは史上4人目の快挙だった(過去3名はアンディ・コール、マーカス・ベント、ジョシュア・キング)。
ニュージーランド生まれで191cmの恵まれた体躯。本来ならラグビーの道に進むところだが、イングランド人の母親の方針でこちらの道を選んだ。「身体が大きかったので、周りの人から何度もラグビーを勧められたが、母が許さなかったのさ。僕がケガするのを心配してね」と、過去にウッドは丸いボールを選んだ理由について語っている。
ニュージーランドのメディアも今回のウッドのハットトリックを報じており、プレミアでの通算ゴール数(62ゴール)でデイビッド・ベッカム、ヤヤ・トゥーレ、ロベール・ピレス、スタン・コリモアといった偉大な選手たちと肩を並べたと伝えた。
そして同国メディア『Stuff』は、ウッドのハットトリックで大儲けしたファンがいることも報じた。ニューカッスル戦でのウッドのハットトリックは、ブックメーカーのオッズが500倍。20ポンド(3600円)を賭けて1万ポンド(180万円)を手にした幸運なファンがいたという。
そしてどうやら、ウッドのハットトリックは日本でも話題になったようだ。SNSでは「ウッド(木)」のハットトリックで「フォレスト(森)」が勝利したと、ごくごく一部で盛り上がったとか。
Photo: Getty Images
Profile
田島 大
埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。