スコットランド代表が来夏ドイツで開催されるUEFA EURO 2024の本選出場権を獲得した。2大会連続でのEURO出場は実に28年ぶりのことになる。
ハードワーク、謙虚、そしてマクトミネイ
イングランド代表とともに世界最古の代表チームと呼ばれるスコットランドは、今回のEURO予選で快進撃を見せている。151年の代表史において初となる開幕5連勝スタートを成し遂げると、10月12日に行われた敵地でのスペイン戦には0-2で敗れて初黒星を喫するも、ワールドカップ予選を含めるとそれまで予選グループで「11連勝」という数字を残していた。
そして迎えた10月15日、自分たちの試合はなかったものの、同組のスペインが3位のノルウェーを下してくれたことでスコットランドの2位以内が確定し、2試合を残して本大会出場を決めた。前回の2021年大会に続いて2大会連続でのEURO出場だが、前回はUEFAネイションズリーグの成績によるプレーオフ経由での本選出場のため、予選を勝ち上がって主要国際大会に出場するのは1998年ワールドカップ以来、実に26年ぶりの快挙となる。
2022年ワールドカップの予選ではプレーオフでウクライナに敗れて涙を飲んだスティーブ・クラーク監督は、「今夜は乾杯するが、すぐに(10月17日の)フランスとの親善試合に備える」と喜びを口にした。チームには主将アンディー・ロバートソン、DFキーラン・ティアニー、MFジョン・マッギン、MFカラム・マグレガーなど何名もの功労者がいるが、やはり今予選の主役はスコット・マクトミネイだ。今予選では、ここまで6試合で6ゴールの大活躍。ベルギーのFWロメル・ルカク(9ゴール)、ポルトガルのFWクリスティアーノ・ロナウド(7ゴール)に次ぐゴールを決めている。12日のスペイン戦でも直接FKでネットを揺らしたが、VARによってゴールが取り消されていた。
マクトミネイは所属クラブのマンチェスター・ユナイテッドでも直近のリーグ戦で87分に投入されると、後半追加タイムに2得点してチームを逆転勝利に導いていた。「僕はストライカーだったことがない。子供の頃からずっとMFさ」と語るが、ボックス内に飛び込んだ際の決定力は“ストライカー”と疑われても仕方ない。英紙『The Guardian』も、今予選のスコットランドの躍進を「ハードワーク、謙虚、そしてマクトミネイ」と表現しているほどだ。
次の目標はグループステージ突破
現代表の快挙をOBたちも喜んでいる。「2試合を残して突破なんて信じられない。スコットランドがスペインと同じ勝ち点で並んでいる。それがすべてを物語っている」と元スコットランド代表MFマイケル・スチュアートが語れば、元代表のFWスティーブン・トンプソンはこう喜ぶ。
「自分は(ファンとして)1998年ワールドカップを見ていて、スコットランドがゴールを決めた際に歓喜のあまりビールをかけ合ったのを覚えている。若い世代のファンが、2大会連続でそういう経験をできると思うとうれしくて仕方ない」
次の目標は来年のドイツ大会でグループステージを突破すること。これまでスコットランドはワールドカップとEUROを合わせて国際大会に11回出場しているが、一度もグループステージを突破したことがない。そのため、ユナイテッドで活躍した元スコットランド代表MFダレン・フレッチャーは「歴史を作ってくれ」と今の代表チームに夢を託す。
果たして“タータン・アーミー”は本大会でどんな戦いを見せてくれるのか。今から来夏のEUROが楽しみだが、実は今予選ではマクトミネイ以外にも“スコットランドの英雄”が誕生したそうだ。それがバルセロナのスペイン代表MFガビである。
スコットランドのファンは、15日のノルウェー戦で決勝点を決めてスペインとスコットランドを同時に本大会へと導いた19歳のガビ(Gavi)に感謝を込めて、ゲール語で「息子」を意味する「Mac」を付けて「McGavi(マクガビ)」と称えているそうだ。
Photo: Getty Images
Profile
田島 大
埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。