7人制サッカーにテーブルゲームの要素も加えたスポーツ・エンターテイメント『キングス・リーグ』。発案者で名誉会長のジェラール・ピケが、海外へ進出することを発表した。カードによってはラ・リーガの試合以上の視聴者を集め、9万人を動員してカンプノウを満員にしたスペインでの成功に気を良くし、フォーマットをそのまま輸出する格好になる。
ショーか、真剣勝負か
来年スタートが正式に決まったのが、『キングス・リーグ・アメリカス』。これは本拠地をメキシコのメキシコシティに置き、北中南米(ブラジル以外)をテリトリーとするもの。アメリカの参加は異質に見えるが、スペイン語話者をターゲットにできるからで、ブラジルが外されたのは言語が違うからだ。
参加チームは本家通り12の予定だが、対抗意識を煽るためにメキシコ2、アルゼンチン2、アメリカ1など、国別に振り分けられるのではないかと予想する。
ただ、そうなると試合開催地が問題化するかもしれない。スペインにならってメキシコシティでの一括開催だとすると、遠征しなければならない他国のチームの不利は明らかだ。
これに対して「これはショーで遊び。純粋なコンペティションではないから……」という言い訳は常に可能なのだが、強烈なライバル意識があるから、それでは収まらないかもしれない。
成功は間違いないが…
新リーグが成功する文化的背景はある。サッカーに熱狂する人たちであること以上に、サッカーのショー化、お遊び化に慣れた人たちだからだ。
日本だと真面目に戦術を語ってしまうが、ラテンの人たちはそんなことはどうでも良くて、贔屓を引き倒してライバル間の罵倒や喧嘩(本気ではなくプロレス的な出来レースでのそれ)、グラウンド外のスキャンダルでコンテンツが成立してしまうのだ。
そう考えると、25年以降に開催予定のブラジルやイタリアは成功するのではないかとみるが、フランスやドイツはピケの思惑通りにいかないのでは、と思う。ブラジルはネイマールやロナウジーニョが会長になるようで、レジェンドが国民的なスターになれる社会で人口も多いし、国外にポルトガル語圏が広がっていることを考えても、大成功間違いなしである。
ピケの夢は、いずれリーグ王者同士によるチャンピオンズリーグを開催することらしい。前述のコラムでも書いたが、大人の遊びは大いに結構なのだが、そのために若いスポーツマンが薄給で使われているような現状なので、世界進出を喜べない自分がいる。
Photo: Getty Images
Profile
木村 浩嗣
編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。