UEFAネーションズリーグの準決勝(6月15日)と決勝(または3位決定戦。18日)に向けたスペイン代表の招集メンバーが発表された。
GK:ウナイ・シモン(アスレティック・ビルバオ)、ケパ・アリサバラガ(チェルシー)、ダビド・ラジャ(ブレンフォード)
DF:ダニエル・カルバハル(レアル・マドリー)、ヘスス・ナバス(セビージャ)、アイメリク・ラポルテ(マンチェスターC)、ダビド・ガルシア(オサスナ)、ロビン・ル・ノルマン(ソシエダ)、ジョルディ・アルバ(バルセロナ)、フアン・ベルナト(パリSG)
MF:ロドリ(マンチェスターC)、マルティン・スビメンディ(ソシエダ)、ファビアン・ルイス(パリSG)、ミケル・メリーノ(ソシエダ)、ガビ(バルセロナ)、セルヒオ・カナーレス(ベティス)
FW:アルバロ・モラタ(アトレティコ・マドリー)、ホセル(エスパニョール)、ロドリゴ(リーズ)、マルコ・アセンシオ(レアル・マドリー)、ダニ・オルモ(ライプチヒ)、ジェレミ・ピノ(ビジャレアル)
選手を固定せず、調子を優先
まず目を引くのは、またも繰り返された大幅な変更。3月の最初の招集でルイス・デ・ラ・フエンテ監督はW杯の招集メンバーから15人を入れ替えた。そして今回の2回目の招集では前回から8人を入れ替えている。
イアゴ・アスパス、ボルハ・イグレシアス、ミケル・オヤルサバルらが今回呼ばれなかったのは、調子を落としているからだろう。ナバスとアルバの大ベテランを呼んだのは、アレックス・バルデの負傷でさらに深刻になったSBの人材不足の反映だ。
“FCルイス・エンリケ”を作った前監督とは正反対の、時々の調子の良い者を呼ぶという現監督の方針は貫かれているわけだが、その反面、どんなプレーをするかやってみなければわからない、という不安は継続。デビューのノルウェー戦は内容が悪く、スコットランド戦では敗れているが、イタリア相手の準決勝ではどんな試合を見せるだろうか。
フランス生まれのル・ノルマンを初招集
次に目を引くのはル・ノルマンの招集だ。フランス生まれだが19歳の時からレアル・ソシエダでプレーし、スペイン代表入りを希望していた。3月にも招集の噂があったが、スペイン国籍取得が間に合わなかった。フランス国籍の選手が二重国籍を取得してスペイン代表でプレーするのは、ラポルテに続いて2人目になる。
プレーの先を読む能力に長け、マークが激しく1対1に強いCBで、デビュー当時はいま一つだった足元の技術も、今はボール出しの中心になるほど上達。周囲に安心感を伝える冷静沈着な性格も良い。ラファエル・バラン、プレスネル・キンペンベ、ダヨ・ウパメカノ、ジュール・クンデら世界的な選手がいるフランスとは対照的にCB不足のスペインでは重要な戦力となるだろう。
ただ、国籍入手の際のスポーツ選手への特別扱いについてはまたも批判の声が上がっている。フランス人の場合は通常10年間の居住実績やペーパー試験が必要で、手続き開始から取得まで3、4年かかるのが普通だが、ル・ノルマンもラポルテもスポーツ文化省の推薦状1枚で、数カ月間で国籍が出ている。ラポルテはEURO2022出場、ル・ノルマンはネーションズリーグ出場が優先されたわけだ。
国境を接するアフリカと旧植民地から欧州圏のパスポートを手に入れようと、多くの移民がやって来るスペインならではの事情が批判の背景にある。
Photo: Getty Images
Profile
木村 浩嗣
編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。