ラモン・メネーゼス率いるU-20ブラジル代表、“結束力”で優勝を目指す
5月20日からアルゼンチンで開催され、日本も出場しているU-20ワールドカップ。グループリーグD組を戦うU-20ブラジル代表は、決勝トーナメント進出に向けて、21日のイタリア戦を皮切りに24日ドミニカ共和国、27日ナイジェリアと対戦する。
チームを率いるのは、元ブラジル代表であり、2003年には東京ヴェルディでもプレーしたラモン・メネーゼス監督だ。U-20ブラジル代表監督に就任した昨年3月からここまで、このU-20W杯の予選も兼ねたU-20南米選手権を含めて20試合14勝4分2敗、46得点16失点と、攻撃的なチームを作ってきた。
ハードトレーニングで選手を鍛える
今大会のチームの21人中14人は、南米選手権の優勝メンバー。その他の選手たちも、すでにラモンのチームで国際大会や親善試合を戦い、それぞれ結果を出した選手たちだ。
初めてチームに合流したのは、アーセナルのFWマルキーニョスのみ。彼もこれまではクラブが派遣しなかったものの、以前からラモンが招集するために観察していた選手の1人だった。
どの国でもそうだが、U-20ともなると、所属クラブではプロチームの主力、もしくは重要な戦力の1人となっている選手が多く、FIFA国際マッチデーではない日程のこの大会には、クラブが招集を拒否した選手もいる。
しかし、ラモンは「招集した選手たちを信頼しているし、その信頼を彼らにも伝えていくつもりだ。すでに一緒に仕事をしてきて、僕らの考え方も、目標もよく分かっているし、この黄色のシャツを来て、国を代表するに値する選手たち。強いチームだと自信を持っている」と力強く語っている。
ラモンの練習は非常にハードなことで有名だ。リオデジャネイロ郊外にあるブラジル代表専用施設での1週間の直前合宿でも、基本的には午前午後の2部練習を行った。招集したメンバーの特徴を最大限に生かすため、戦術のバリエーションや選手起用のパターンを準備し、それをチームに植え付けていく。ラモン自身がウォーミングアップを一緒に取り組むことも多く、ミスをすれば罰ゲームまでこなし、若い選手たちをリラックスさせるが、いったん練習が始まれば、 “鬼監督”と呼びたくなるほどの厳しさを見せる。
3月にフル代表の親善試合モロッコ戦で代行監督を務めた際は1-2で敗れたものの、試合後にはキャプテンのカゼミーロも「5日間の練習だけですべてを理解し、実践するのは難しいけど、ラモンはとても良いアイデアを持っていて、それを僕らにスピーディーに伝え、素晴らしい仕事をした」と語っている。
「僕らのチームは結束している」
直前合宿では2つの練習試合を行い、21人全員が実戦の機会を得た。ブラジル国内で特に注目を集める選手の1人、MFアンドレイ・サントス(チェルシーからバスコダガマにレンタル移籍中)は、彼自身が「僕はボランチとして守備に強く、ボールの出どころを防ぐのが得意。でも、ペナルティエリアに飛び込んでゴールを決めるのも好きなんだ」と語る通り、U-20南米選手権では6ゴールを決め、チームメイトのビットー・ホッキと得点王を分け合った。U-20代表で出場した大半の試合でキャプテンも務めたリーダーでもある。
人気・実力とも急上昇中のMFギリェルメ・ビロは、運動量豊富でスピードもある。疲れを知らず、ピッチのどこにでも現れて、ドリブルやアシスト、そしてゴールで攻撃に貢献する。所属するコリンチャンスの監督に就任したばかりのバンデルレイ・ルシェンブルゴ監督が彼に惚れ込み、自分の就任前に代表派遣が決まっていたため、クラブを不在にすることを嘆いたほどだ。チームを盛り上げる陽気な性格の一方で、「U-20南米選手権を通して、簡単な相手や試合など存在しないことをあらためて実感した」と、自分の経験をチームメイトたちにも伝えている。
MFマルロン・ゴメスは、U-20代表とは思えない落ち着いた性格が評判だ。ピッチの中ではその技術力と試合読解力で相手のボールを奪い、攻撃へと展開する。元ブラジル代表のカカーのビデオなどを見てよく研究しているそうだ。
初参加のマルキーニョスも「僕はブラジル人だから、喜びを持って、しかも同時に責任感のあるプレーをするのが好きだ」と言うのを聞くにつけ、ラモンのスピリットをよく吸収しているようだ。
そして、インタビューしたすべての選手たちが「僕らのチームはすごく結束している」と語るのが印象的だ。当たり前のようにも聞こえるが、過去の年代別代表では、たとえばヨーロッパでプレーしている選手と国内組など、チーム内に何らかの壁があり、それだけが理由ではないにしても、早い段階で敗退した年もある。
その選手同士の雰囲気を聞くと、ラモンもこう答えた。
「チーム内の雰囲気というのは非常に重要なことなんだ。このチームの雰囲気は非常に良い。選手たちにいつも言うのは『監督として、その状況ごとに選択をしていくが、一人ひとりに必要とされる時が来る。11人で勝つのではなく、ここにいる21人全員で勝つんだ』ということだ。選手たちはそれを非常に良く理解し、結束し、刺激し合い、集中している。その姿勢が印象的だよ」
23回目を迎えるU-20W杯で、ブラジルが12年ぶり6回目の優勝となるか、注目したい。
Photos: Kiyomi Fujiwara, Lesley Ribeiro/CBF
Profile
藤原 清美
2001年、リオデジャネイロに拠点を移し、スポーツやドキュメンタリー、紀行などの分野で取材活動。特にサッカーではブラジル代表チームや選手の取材で世界中を飛び回り、日本とブラジル両国のTV・執筆等で成果を発表している。W杯6大会取材。著書に『セレソン 人生の勝者たち 「最強集団」から学ぶ15の言葉』(ソル・メディア)『感動!ブラジルサッカー』(講談社現代新書)。YouTube『Planeta Kiyomi』も運営中。