ベルギーリーグで、ある1人のナイジェリア人FWが話題をかっさらっている。ヘントに所属する20歳の新鋭ギフト・オルバンだ。トルコの強豪イスタンブール・バシャクシェヒルとアウェイで対戦したUEFAカンファレンスリーグのベスト16では、わずか3分25秒（205秒）でハットトリックを達成。UEFAからは「史上最速のハットトリック」と伝えられた。

　3月12日のベルギーリーグ第29節ズルテ・ワレヘム戦で後半だけで4ゴール叩き出したナイジェリアの新鋭は、リーグレベルこそ違えど世界的なストライカーと匹敵するほど爆発的な得点力を発揮している。2月11日のウェステルロー戦でデビューしてからわずか1か月弱で、10試合12ゴールと荒稼ぎしているのだ。

トーゴからノルウェーを経てベルギーへ

　2002年にナイジェリアで生まれたオルバンは、幼少期にトーゴへ引越しており選手としてのキャリアを同国の首都のロメでスタートしたためナイジェリアの育成プログラムに関わったことがなく、年代別代表の経験がなかった。国籍こそナイジェリアだが、普段はトーゴの公用語であるフランス語を話す。

　だが、トーゴでセレクションを受けている時にナイジェリアの著名なスカウト、オラ・ファウラーに見出され、ナイジェリアのバイソンFCアカデミーに加入。その後ノルウェーのスカウトの目に留まり、2022年5月にノルウェー2部のスターベクへ移籍する。

　ビザの問題があり合流が遅れたものの、スターベクでは並外れた得点力を発揮。22試合で16ゴールを叩き出し、ノルウェー2部の得点王に輝いた。そして、今冬の移籍マーケット最終日の1月31日に330万ユーロのオファーを受けてヘントへ完全移籍する。

　ヘントの一員となると、元ベルギー代表FWローラン・ドゥポワトル、ノルウェー代表FWイェンス・ペッター・ハウゲらポジションを争うライバルを押しのけすぐさまレギュラーの座を確保。1試合1得点を超えるペースでゴールを量産し、右膝前十字靭帯断裂で今季絶望のエース、タリク・ティスダリの穴を埋める以上の働きを見せている。

将来はプレミアでのプレーを希望

　最大の特徴は、ゴール前での冷静さと正確なキックだ。ボックス内での勝負強さが際立っており、混戦の中でもワンタッチでシュートを決める技術と勝負強さを備えている。かつてクラブのエースストライカーを務め、リールで得点を量産しているカナダ代表FWジョナサン・デイビットと重ね合わせているファンも多い。

　ナイジェリアの同胞ポール・オヌアチュ、ユニオンのベルギー代表FWダンテ・ファンゼイルがベルギーから去った今、わずか数カ月の活躍ながら現在ベルギーで最高のFWとしての呼び声が高くなってきている。

　オルバンは将来、プレミアリーグでのプレーを夢見ている。「プレミアリーグでプレーするには、自分の実力をさらにレベルアップしなければならない。まだまだやるべきことがある」とヘントの公式サイトで語っている。今後の飛躍が楽しみだ。

Photo: Getty Images

Profile

シェフケンゴ

ベルギーサッカーとフランス・リーグ1を20年近く追い続けているライター。贔屓はKAAヘントとAJオセール。名前の由来はシェフチェンコでウクライナも好き。サッカー以外ではカレーを中心に飲食関連のライティングも行っている。富山県在住。