コパ・デルレイの準々決勝が終了し、ベスト4はバルセロナ、レアル・マドリー、アスレティック・ビルバオ、オサスナとなったのだが、グラウンド外で問題が起きていた。
準々決勝までは1試合制でホームチームが有利になる。実際、戦績はホームの3勝1敗に終わったのだが、ここまでは仕方がない。2019-20から1試合制になったことでサプライズが増え大会の魅力が増しているし、開催地は純粋にくじ引きで決まるからだ(対戦チームのカテゴリーが異なる時は、低いカテゴリーのチームで開催)。
問題になったのは、アウェイファンの受け入れ方である。
UEFAのコンペティションに関してはキャパシティの5%をアウェイファン向けに用意しなくてはならないと定められているが、スペインの国内リーグとカップでは決定権はホームチームに一任されている。
その結果、バルセロナがソシエダファンに用意したチケットは162枚(キャパの0.12%)、レアル・マドリーがアトレティコ・マドリーファンに用意したのは334枚(0.41%)だった。さらに、一般ファン向けのWEBページを通じての直接購入を禁止し、アウェイファンがシャツやマフラーを着けて指定エリア以外に座ろうとした場合は「入場を禁止する場合がある」と警告した。
これ、ホーム&アウェイのリーガであればまったく普通のことなのだが、一発勝負のトーナメント制だったことで「不公平だ」や「表現の自由の侵害だ」といった不満の声が挙がり、バルセロナもレアル・マドリーも入場禁止を撤回することになった。
これにて一件落着!……だろうか? そうは思わない。
現地の殺伐さは…
数が少な過ぎた、というのはある。連盟は「最少5%」などの規定を設けるべきだ。一方で、入場禁止が必ずしも悪いとは思えない。
両チームのファンが入り混じればトラブルになりかねない。エリアを分けるのはセキュリティの責任を負う者=ホームチームとして当然の措置である。
伝統的にライバル関係が薄いバルセロナとソシエダの場合は、入場禁止はやり過ぎだったかもしれない。だが、マドリッドダービーなのだからレアル・マドリーがアトレティコ・マドリーファンの一部を入場禁止にするのはまったくおかしくない、というか絶対にそうすべきだ(逆も同じ。アトレティコ・マドリーもレアル・マドリーファンを入場禁止にすべき)。
クラシコやマドリッドダービー、バルセロナダービー、セビージャダービーがいかに殺伐として、暴力の危険がリアルにあるものなのかは行けば誰でもわかる。装甲車や騎馬隊が出て、テロ専門の警察が厳重にエリアを分けているからこそ、我われは安心して観戦できているのである。バスクダービーのように両チームのファンが入り混じって観戦するのが理想である。だが、サッカーの現実は、「表現の自由」で片付く綺麗事とは残念ながら違うのだ。
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Profile
木村 浩嗣
編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。