1月30日、浦和レッズに所属していたMF松尾佑介が、ベルギーリーグのKVCウェステルロへ期限付き移籍することが決定した。契約期間は2023年12月31日までで、初の海外移籍となる。松尾は浦和ユースから仙台大学、横浜FCを経て2022年に移籍した浦和で1トップやサイドアタッカーとして活躍。そんな25歳の加入した新天地ウェステルロについて触れていきたい。
2019年にトルコ資本に
クラブ創設は1933年。以来長らく下部リーグに所属していたが、1997年に初の1部昇格を果たす。1999年にベルギー代表のキャプテンも務めたMFヤン・クーレマンスが監督に就任してからチームは台頭し、2000-01シーズンにベルギーカップ初制覇を遂げている。その後、2011-12まで15シーズン、1部リーグの座を守るも2部降格の憂き目に遭う。
2シーズン後の2014年に1部再昇格を果たすが、3シーズンで再び降格。2017年には3部降格の危機に陥るものの、2019年にトルコの実業家オクタイ・エルジャンが株式を買収し、トルコ資本のクラブとなった。地域密着を標榜しつつもトルコサッカー協会と連携し、同じトルコ資本であるイングランドのハル・シティ、オランダのフォルトゥナ・シッタードなどとの提携も視野に入れており、2024年には上位進出を目指す「KVCウェステルロ2024」という計画を立てている。
トルコ資本参入後は3シーズン連続で昇格を逃していたが、2021-22シーズンに2位のRWDMに勝ち点7差をつけて優勝し、6シーズンぶりに昇格。今シーズンは降格候補として見られていたが、開幕のセルクル・ブルッヘ戦で勝利後、予想に反して中位をキープしている。
サイドや2トップでの起用が有力か
トルコ資本参入後、ウェステルロはトルコ人選手やトルコのクラブからの補強を増やしている。
今シーズン開幕前にはトルコ代表経験者のGKシナン・ボラト、MFハリル・アブクナル、年代別代表のMFムハメド・ギュムスカヤ、DFラビル・タギルを獲得。また、イスタンブール・バシャクシェヒルから移籍してきた元ベルギー代表MFナセル・シャドリをはじめ4選手がトルコのクラブから加入している。
チームを率いるのは、ベルギー人のヨナス・デ・ルーク監督。現役時代はCBとしてアントワープ、ヘント、ドイツのアウグスブルクなどでプレーし、2015年に引退。その後は指導者に転身し、2017年にシント・トロイデンの監督を務めたのち、近年はアンデルレヒトのアカデミーの監督や、トップチームのアシスタントコーチを務めていた。2021年にウェステルロの監督に就任すると、1年でチームを昇格へと導いてみせた。
現在チームにはシャドリや元ロシア代表DFロマン・ノイシュテッターら国際的な知名度が高い選手が在籍しているが、中心を担っているのは20歳前後の若手選手たちだ。
基本システムは[4-4-2]を採用しており、守備時はシャドリが最終ラインまで下がって5バックを形成するなど常にポジションを可変するモダンなフットボールを展開している。最も特徴的なのはサイド攻撃。若い両SB、22歳のマクシム・デ・カイペルとローマから期限付きで加入中の21歳のアメリカ代表のブライアン・レイノルズの2人が積極的に駆け上がり、前列のウイングと連係を取りながら大外とハーフスペース間でレーンを変え、切り裂くように攻撃を仕掛ける。デ・カイペルは近い将来のベルギー代表候補として期待されている有望株だ。
では、そんなチームにあって松尾はどこで起用されるのか。
1月10日に元トルコ代表のサイドアタッカー、ハリル・アブクナルがトルコ2部のエユプスポルへ移籍しており、松尾は後釜として期待される。アブクナルはシーズン序盤は右サイドで起用されていたが、移籍直前は左サイドでプレーしていた。左サイドの場合シャドリとポジションが重なるものの、元ベルギー代表MFはトップ下や右サイドでも起用されており、併用は可能だろう。
また、ウェルステロでは今シーズン、南アフリカ代表FWライル・フォスターとマリ代表FWドルジェレ・ネネが主に2トップを組んでいたが、25日にフォスターがバーンリーへ1200万ユーロで完全移籍しており、浦和時代にも起用されていたFWでの出場も考えられる。
上位チームにも引けを取らず、上質なサイドアタックに特徴のあるウェステルロで、松尾にはJリーグでも際立った突破力を存分に発揮しての飛躍に期待したい。
Photo: Getty Images
Profile
シェフケンゴ
ベルギーサッカーとフランス・リーグ1を20年近く追い続けているライター。贔屓はKAAヘントとAJオセール。名前の由来はシェフチェンコでウクライナも好き。サッカー以外ではカレーを中心に飲食関連のライティングも行っている。富山県在住。