テレビではスペインスーパーカップの中継をしている。レアル・マドリーに続きバルセロナもPK戦で勝ち上がり、クラシコとなった決勝は1-3でバルセロナが勝利しタイトルを掲げた。サウジアラビアのファンは大喜びで、スペインサッカー連盟会長もホッと胸を撫で下ろしているだろう。
なにせ、この大会は2強とその他では受け取るギャラが違い、2強が参加できなかった場合は連盟にペナルティが課されるという、海外でクラシコを実現するために作られた大会だからだ。そして、これによりジェラール・ピケの会社は4000万ユーロ(約56億円)のコミッションを手にする。
そのピケの元彼女のシャキーラは、彼と新恋人への当てつけを歌詞にして24時間ほどで6000万回再生を記録したそうだ。この一種の炎上商法の儲けはいくらになるのだろう?
また、お昼のニュースによるとロナウド対メッシをサウジアラビアリーグで再現しようというプランがあり、その場合、メッシへはロナウドの2億ユーロ(約280億円)を上回る年俸3億ユーロ(約420億円)がオファーされる予定だそうだ。
以上、もう当たり前のことだが、サッカーはビジネスであり、ビジネスである限りお金儲けが最優先、という話である。そんな中で、サッカーは金ではない、という移籍劇が注目されている。
行き先は、2カテゴリー下の生まれ故郷のクラブ
12月30日、ルーカス・ペレスはカディスでの最後の試合にゴールを決めてファンへ別れを告げた。生まれ故郷の愛するデポルティーボ・デ・ラ・コルーニャでプレーするためだ。リーグのカテゴリーを2つ落し、契約解除金の半分(50万ユーロ)をポケットマネーで払い、200万ユーロの年俸が10分の1ほどになっても古巣へ戻ることを選んだ。
デポルティーボは連盟1部リーグ(3部)に参戦中で、2部昇格を目指している。1月13日現在の順位は4位、首位との勝ち点差は4。ダイレクトで昇格するのは1チームだけなので、これ以上離されるわけにはいかない。
昨季、デポルティーボが2部へ昇格すれば移籍という約束がカディスとの間にできていたが、プレーオフで敗退。その試合をスタジアムで観戦していたルーカスは涙を流した、というエピソードがある。
先に紹介したカディスでの最終戦では、ケガを避けるためにデポルティーボ側は欠場を勧めたが、恩があるからと耳を貸さず、ゴールで有終の美を飾っている。
義理堅く、恩を大事にする男なのだ。
アーセナルが契約解除金2000万ユーロを払った時もデポルティーボとの契約更新を望んでいたが、財政再建中だったクラブに背中を押されて出て行った経緯がある。プレミアリーグ在籍中に稼いだので、キャリアの最後は「自分が最も好きなことをやりたい」と決めていたのだそうだ。
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Profile
木村 浩嗣
編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。