12月15日、レアル・マドリーが16歳のブラジル人、エンドリッキ・フェリペ・モレイラの獲得を発表した。未成年なので18歳となってFIFAの国際移籍規定をクリアするまでは現所属のパルメイラスにレンタルされることになる。移籍金は6000万ユーロ、Rマドリー入りは2024年7月の予定だ。
5年間で3度目の逸材獲得
スペイン各紙によると、上背はないがたくましい下半身の持ち主で、スピードとパワーが持ち味のゴールゲッターということで、キリアン・ムバッペに似ているという。最年少記録や得点記録を次々と塗り替えた逸材だというから、ぜひ順調に大きく育ってほしいものだ。
Rマドリーがブラジル人の少年を青田買いして18歳になるまでレンタルし、その後に正式加入させるパターンを踏襲するのはここ5年間で3度目だ。
最初はビニシウス。2017年5月、16歳の時にフラメンゴから4500万ユーロの移籍金で獲得し、2018年7月までレンタルして正式移籍させた。
2人目はロドリゴ。2018年6月、17歳の時にサントスから4500万ユーロの移籍金で獲得し、2019年7月までレンタルして正式移籍された。
リスクもあるがメリットは大きい
この3つの移籍の陰には、フロレンティーノ・ペレス会長の側近でブラジル担当スカウト、ジュニ・カラファトの存在がある。
未成年のタレントの獲得はリスクが大きい。Rマドリーは2005年、ロビーニョの獲得に2500万ユーロを費やしたが、わずか3年で放出している。この時はマンチェスター・シティに高値で売り付けて資金回収+利益を出すことに成功したものの、「クラブ史上最悪の獲得」と今も言われている。
この失敗に学んだクラブは1年をかけて本人の性格や家庭環境も含めてじっくり調査。欧州の世界的なビッグクラブで成功する資質があるかを、スポーツ面でもそれ以外でも見極めることが慣習化されており、カラファトがそのリサーチを先導している。
未成年者の獲得はメリットも大きい。ビニシウス、ロドリゴともトップチームのレギュラーを獲得。戦力になっているだけでなく、移籍情報サイト『トランスファー・マルクト』によると、その市場評価額はそれぞれ1億2000万ユーロ、8000万ユーロに跳ね上がっている。先行投資のお陰で、3分の1から半分の資金で将来を担うタレントの補強に成功したわけだ。
エンドリックにはパリ・サンジェルマン、チェルシー、マンチェスター・ユナイテッドからもオファーが届いていたとされる。だが、私が彼の父親なら迷わずRマドリーを選ぶ。同国人の先輩のビニシウス、ロドリゴがいるし、クラブは育成と大成のノウハウを知り尽くしているはずだからだ。
欧州に行くならRマドリー、というのがブラジルの少年たちの合言葉となる時代がしばらく続きそうだ。
Photo: Getty Images
Profile
木村 浩嗣
編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。