アルビレックス新潟に所属していたMF本間至恩が、ベルギー1部の名門クルブ・ブルッヘに完全移籍した。J2屈指のドリブラーである本間の移籍は、Jリーグファンの間で大きな話題となった。
近年、多数の日本人選手がシントトロイデンなどベルギーのクラブに流れているが、最高峰であるクルブ・ブルッヘへの移籍は本間が初となる。今回は本間が移籍したクルブ・ブルッヘと、今後の展望について触れていきたい。
3連覇中の絶対王者
クルブ・ブルッヘは現在ベルギーリーグ3連覇中。1891年に創設され、130年の歴史があり、アンデルレヒトやスタンダール・リエージュ、アントワープらと並ぶ、ベルギーを代表するクラブの1つである。リーグ優勝は18回、カップ戦優勝は11回を誇り、欧州カップ戦では1977-78シーズンにヨーロピアンカップ(現UEFAチャンピオンズリーグ)で準優勝している。
直近10年間で見ても5回の優勝を誇る。ベルギー代表に名を連ねるGKシモン・ミニョレ、DFブランドン・メヘレ、MFハンス・ファナーケン、デンマーク代表FWアンドレス・スコブ・オルセン、オランダ代表FWノア・ラングらの実力者を擁し、ベルギー屈指の資金力と戦力を誇る絶対王者だ。
昨季はレギュラーシーズンこそユニオン・サン・ジロワーズにトップを譲ったものの、プレーオフでは直接対決で2連勝し、逆転に成功した。逆転優勝に貢献したオランダ人のアルフレト・スフリューデル監督はアヤックスへ引き抜かれたものの、アシスタントコーチを務めていたカール・フーフケンスが内部昇格した。選手時代はクルブ・ブルッヘ、ストーク・シティ、ウェストブロミッチでCBとしてプレーし、代表22試合の活躍を見せた人物である。
今季はライバルのユニオンからデンマーク代表MFキャスパー・ニールセン、バルセロナBからFWフェラン・ジュグラ、カナダ代表FWサイル・ラリンを獲得するなど、ベルギーリーグ4連覇とCLでのベスト16進出に向けて積極的な補強を行った。
セカンドチームからスタート
本間は、まずはクルブ・ブルッヘのセカンドチームである「クルブNXT」でプレーすることになる。クルブNXTは2020-21シーズン、ロケレンとルーセラーレの破産、ビルトンのプロライセンス失効によって2部リーグが1チーム足りない状況となったため、特別参加として1シーズン参戦した。その際、世界的人気を誇るアメリカのプロレス団体「WWE」の下部組織「NXT」にちなんで「クルブNXT」と名付けられた。
ベルギーでは従来、セカンドチームはリザーブリーグでプレーすることになっていたが、今季から2部リーグが「D1B」から「チャレンジャーズ・プロ・リーグ」へと改称。アンデルレヒト(RSCAフューチャーズ)、ヘンク(ヨング・ヘンク)、スタンダール・リエージュ(SL16FC)、そしてクルブ・ブルッヘ(クルブNXT)が参戦し、従来の8チームを加えた12チームのリーグ戦として再編されることになった。
2部リーグに参戦するクルブNXTは、ニッキー・ハイネンを新監督として招聘。2018年からシントトロイデンU-18監督、アシスタントコーチ、監督代行を歴任しており、日本人選手に関わりのある指導者である。
クルブNXTでは、主に20歳以下のクルブ・ブルッヘの下部組織出身選手がプレーする。年代別のベルギー代表選手も数多く在籍しており、20-21シーズンにプレーした選手の中には、わずか16歳でトップチームデビューを飾ったU-19代表MFノア・ムバンバ、今年2月にレッドブル・ザルツブルクに500万ユーロで移籍したU-21代表DFイグナス・ファンデルブレントなどもいた。
21歳の本間は、クルブNXTでは年長組となる。プロとしてのキャリアのない選手が数多く在籍する中、2種登録を含めて5年間のキャリアを誇る本間はチームを牽引する立場となる。
事実上、外国籍枠がない多国籍リーグであるベルギーリーグでは、これまでプレーしてきたJ2以上にフィジカルの優れた相手との対戦を強いられる。ベルギーでの環境に慣れつつ、チームを牽引する原動力として結果を残し、クルブ・ブルッヘのトップチームに昇格することを期待したい。
Photo: Getty Images
Profile
シェフケンゴ
ベルギーサッカーとフランス・リーグ1を20年近く追い続けているライター。贔屓はKAAヘントとAJオセール。名前の由来はシェフチェンコでウクライナも好き。サッカー以外ではカレーを中心に飲食関連のライティングも行っている。富山県在住。