5月5日、UEFAカンファレンスリーグ準決勝2ndレグが行われ、ジョゼ・モウリーニョ監督率いるローマがレスターを1-0で下して総合成績で上回り、大会開催初年度で初の決勝進出を果たした。ローマが欧州コンペティションの決勝に進出するのは、1990-91シーズンのUEFAカップ以来31年ぶりのことだ。
相手の猛攻をしのぎ切る
アウェイで行われた1stレグを1-1のドローでまとめていたローマは、前半開始から積極的に攻めたてると、11分に得たCKをタミー・エイブラハムがヘディングで合わせてシュートをねじ込み先制に成功する。
その後レスターの猛攻で防戦一方にはなるものの、前半途中からシステムを[3-4-2-1]から[5-3-1-1]に変更して対応した。クリス・スモーリングを軸とした最終ラインから、中盤から前線までを動き回るロレンツォ・ペッレグリーニらのMF陣、さらには前線で全力疾走を繰り返すエイブラハムなど全員がリードを守るために奔走し、レスターを退けた。
決勝点を決めたエイブラハムは試合後、衛星放送『スカイ・スポーツ』に対して「最後の方はモウリーニョ監督に『もう体力がなくなった』って言ったんだけど、監督からは『続けろ』と言われた。チームのためにと思って頑張ったよ」と告白。
また主将のペッレクリーニは「11分で先制してそのまま逃げ切るなんて、以前は考えられなかったことだ。1年間を通して僕たちは成長してきた。真のチームになっている感覚がある」と団結力を強調した。
「これは『家族』の勝利」
団結力を増したそのグループの中で、若手も台頭している。下部組織から昇格した20歳のニコラ・ザレフスキは、準決勝の2試合で先発に抜擢され左WBとして大活躍。アシストを記録した1stレグに引き続き、この日はカウンターから積極的なドリブル突破でチャンスを作った。
本来はトップ下かウイングハーフなどの攻撃的なポジションでプレーしてきたポーランド移民2世は、故障者の多い中トップチームに引き上げられ、モウリーニョ監督によってコンバートされるや急成長。「ただ監督から言われたことをやっているだけ」と謙遜し、「僕たちは決勝に進出することを目標に努力してきたから、その成果がピッチに出た」と地元メディアに語った。
これでモウリーニョ監督は、史上初めて4クラブ(ポルト、インテル、マンチェスター・ユナイテッド、そしてローマ)を欧州コンペティションの決勝へと導いた指導者となった。感極まった指揮官は一度スタンドへと引っ込んだ後に再びグラウンドへと戻り、試合後もスタジアムに残って声援を送り続けていたファンへ雄叫びを上げて勝利をともに喜んだ。
「これは『家族』の勝利だ。それは選手だけではなく、スタジアムに集ったものすべてが共感の下に戦ったということだ」とファンも含めた一体感を強調した。
カンファレンスリーグの決勝は5月25日にティラナ(アルバニア)で行われ、ローマはマルセイユを破ったフェイエノールトと対戦する。
Photo: Getty Images
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神尾 光臣
1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。