サッカー界の名物代理人として知られるミーノ・ライオラ氏が死去した。54歳だった。
死亡説否定から一転、家族が発表
ズラタン・イブラヒモビッチにポール・ポグバ、ジャンルイジ・ドンナルンマにアーリング・ホーランドなど、欧州で活躍する有力選手の権利を管理するエージェントして名を馳せたライオラ氏は、今年に入り体調を崩していた。
1月12日にミラノ市内の病院に入院、手術を受けていた。一度はモンテカルロの自宅に戻ったものの、数日前から再び体調の悪化を訴えミラノ市内の病院に入院していた。4月28日には死亡説が流され、本人並びに当該病院の主任医師が否定していた。
その4月28日にはイブラヒモビッチも見舞いに訪れていたが、翌日に容体が悪化した後、家族を通して本人の公式Twitterで死亡が発表された。地元メディアでは呼吸器の病気を患っていたとされているが、正確な死因については発表されていない。
サッカー界の各関係者も追悼のメッセージを発表した。非常に結び付きの強かったドンナルンマは「とても悲しくて、言いたいことをすべては言えない。ミーノ、あなたは私にとって唯一の存在だった。今日までそばにいてくれてありがとう」と、ヘンリク・ムヒタリアンは「いなくなって寂しくなるよ。僕の代理人であり、僕の一番の友達であり、また僕の家族だ」とそれぞれ個人のインスタグラムで発表。
また、ミランやインテルなどのクラブも公式Twitterで追悼の声明を発表。ミランの副会長時代に数々の大型取引を行ったアドリアーノ・ガッリアーニ氏は『コリエレ・デッラ・セーラ』に対し「選手に最良の条件を引き出すために行動した人物だった。厳しいが、言ったことを守る公正な人だった」とライオラ氏の死を悼んだ。
70人近い顧客の行方は?
さて、注目はライオラ氏が抱えていた70人近くの選手の行方だ。代理人業のサポートにはいとこのビンチェンツォ氏を始め家族が参加していたが、『グエリン・スボルティーボ』は「代理人の中でも規格外の存在と、実務でよく彼をサポートしていたそのいとこについて選手たちがそれぞれどう判断を下すのか、それを想像するのに皮肉のチャンピオンである必要はない」と、各選手が現在の代理人契約から離れていく可能性を示唆。
一方、著名ジャーナリストのパオラ・フェラーリ氏は「イブラヒモビッチはその後継になることを考えており、その場合、現役は断念せざるを得なくなるとも思っている」などと自身のTwitterで語った。
経済誌『フォーブス』によれば、ライオラ氏は世界で3番目に大きな影響力を持つとされるエージェント。時にはクラブとの関係悪化も辞さない強引な手腕には批判もあったが、卓越したマーケティング上のアピールも絡めて選手に良い条件を引き出そうとしていた姿勢には確かな評価があった。
「サッカー界を変えた」という人物の喪失が、どのような影響を各方面にもたらすのか注目される。
Photo: Getty Images
Profile
神尾 光臣
1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。