ベルギーリーグのレギュラーシーズンが4月10日に終了した。23日からはプレーオフ6試合が行われ、優勝や欧州カップ戦出場権獲得を争う。
終盤の見もの「プレーオフ」
レギュラーシーズンの34試合が終了した後、1位〜8位のチームはプレーオフを戦い、17位のスランは2部の2位RWDMと入れ替え戦を戦う。残りの9チームは、レギュラーシーズンの日程終了によって今季閉幕となった。
レギュラーシーズンでは、シントトロイデンは後半戦を巻き返したが、惜しくもプレーオフを逃し9位で終了。坂本達哉が所属するオーステンデは12位、渡辺剛が所属するコルトレイクは13位でシーズン終了。そして、鈴木武蔵が所属するベールスホットは最下位で2部降格が決定した。また、優勝10回の名門スタンダール・リエージュが14位と低迷する混迷のシーズンとなった。
プレーオフ1にはユニオン・サン・ジロワーズ(以下ユニオン)、クルブ・ブルッヘ、ロイヤル・アントワープ、アンデルレヒトの4チームが参戦。総当たり戦で6試合を戦う。優勝チームは来季のUEFAチャンピオンズリーグ本選に出場し、2位はCL予選を戦う。プレーオフではレギュラーシーズンのポイントの半分からスタートし、小数点は繰り上げられる。
昇格組ながら首位になったユニオン
今季の主役は、昇格組ながらレギュラーシーズンで首位を快走したユニオンだ。48年ぶりに1部に戻ってきたユニオンは開幕戦でアンデルレヒトに勝利し、そのままトップ争いに食い込んだ。第9節までに3敗喫したものの、第11節スラン戦で三笘薫のハットトリックにより逆転勝利を飾り首位に立つと、1度も首位を明け渡さずにレギュラーシーズン1位を守り切った。第10節以降に喫した黒星はOHルーベンとシントトロイデンに破れた試合のみだ。
レギュラーシーズンの成績は24勝5分5敗、2位のクルブ・ブルッヘに勝ち点5差を付けた。得点数はリーグ最多の78、失点数はリーグ最少の27と圧巻の成績を残している。
そのユニオンの原動力となっているのは、リーグ最強の2トップと名高いFWダンテ・バンゼイルとドイツ人FWデニズ・ウンダブのコンビだ。快足FWのバンゼイルとポストプレーを得意とするウンダブの相性は抜群で、2部を戦った昨季は2人で40得点叩き出したが、1部でも実力を遺憾なく発揮した。バンゼイルは11月にベルギー代表にデビューし、ウンダブは1月にイングランドのブライトンへの完全移籍が決定した(今季終了までは期限付き移籍の形で引き続きユニオンに所属)。
2トップの活躍が目立ち、フェリーチェ・マッズ監督の手腕が高評価されるユニオンだが、シーズン通して好パフォーマンスを見せた左利きのCBシーベ・ファンデルヘイデンはベルギー代表に、中盤の要MFキャスパー・ニールセンはデンマーク代表にそれぞれ初招集されるなど、各選手の評価もうなぎ登りだ。冬の移籍市場で主力選手の放出が噂されたが、ほとんどの主力が残留し、チームはレギュラーシーズンを走り切った。
三笘と町田は存在感を示せるか
チャンピオンシッププレーオフの6試合では、これまで以上にシビアな戦いが求められる。首位を快走したユニオンだが、プレーオフで対戦するクルブ・ブルッヘには今シーズン1敗1分、アントワープには1勝1敗と戦績は決して芳しくない。
激戦を迎えるユニオンは、三笘と町田浩樹に期待がかかる。三笘はシーズン序盤からチームに加わり、最初はベンチスタートが中心だったものの、第11節スラン戦でのハットトリックをきっかけに主力として定着した。左WBを主戦場とするため、守備時は5バックを形成するユニオンではSBとしての守備能力を問われるが、左CBファンデルヘイデンとのスムーズな連携により対応ができている。三笘の代名詞であるドリブルは抜群の効果を発揮しており、自陣から長距離を走って決定機を演出している。ユニオンのルクセンブルク代表GKアントニー・モリスをはじめ、ボールを奪った後は三笘に預けて彼を起点としたカウンターを頻繁に狙うこともあり、ユニオンでは重要な武器になっている。
1月にユニオンに加わった町田は、現状ではベンチメンバーとして備えている状況だ。左利きで攻守で光るものを見せているが、同じポジションで利き足も同じファンデルヘイデンとポジション争いをしている状況だ。しかし、これまでは決定機の演出や得点チャンスもあり、危なげない守備を披露しているだけに、決して悪いパフォーマンスではないだろう。
非常に多くの日本人選手がプレーしているベルギーリーグだが、これまでリーグ優勝を経験しているのは2018-19シーズンのヘンク優勝に大きく貢献した日本代表FW伊東純也のみだ。近年はクルブ・ブルッヘが中心に回っているベルギーリーグにおいて、半世紀ぶりに蘇ってきた古豪ユニオンが優勝するようなことがあれば、センセーショナルな出来事としてベルギーリーグ史に残ることとなる。その中に名を連ねる三笘と町田の活躍に期待したい。
Photo: Getty Images
Profile
シェフケンゴ
ベルギーサッカーとフランス・リーグ1を20年近く追い続けているライター。贔屓はKAAヘントとAJオセール。名前の由来はシェフチェンコでウクライナも好き。サッカー以外ではカレーを中心に飲食関連のライティングも行っている。富山県在住。