イタリアの各地元メディアは、エラス・ベローナが近くFWジョバンニ・シメオネの完全移籍に動くと報じた。現在はカリアリからレンタルされているが、15ゴールと自身ではキャリア最多となるシーズンゴール数を記録している。
アルゼンチン人トップの数字
攻撃の要だったマッティア・ザッカーニがラツィオに引き抜かれ、手薄になった前線の補強として昨年8月、ポジションは異なるもののレンタルで補強された。すると、ニコラ・カリニッチとケビン・ラザーニャのコンディションが上がらない中で[3-4-2-1]の1トップとして頭角を表し、第9節ラツィオ戦では4ゴールを挙げた。さらに第12節ユベントス戦でも2ゴールを挙げて勝利に貢献している。
その後、第17節のアタランタ戦以降はゴールに恵まれていなかったが、2月27日に行われた第27節ベネツィア戦で2カ月半ぶりにゴールを挙げると、終わってみればハットトリックを達成。シーズン15ゴールは目下、欧州5大リーグでプレーするアルゼンチン人としてはトップの数字だ。
裏抜けのうまさとスピード、シュートへの思い切りの良さで信頼を得ており、4アシストを記録するなどチャンスメイクでも機能している。「PKを抜きにすれば前半戦の得点王だったが、エラス・ベローナの選手ということで過小評価されていた」とイゴール・トゥドル監督からは全幅の信頼を寄せられている。
買取オプション行使の後は…
こうなると、注目は来季以降の去就だ。スポーツ情報サイト『トゥットメルカートウェブ』によると、エラス・ベローナの首脳陣はシメオネの活躍を高く評価し、1200万ユーロ(約15億円)といわれる買取オプションの行使を決定した。
ただし、これは必ずしも来季の残留を意味するものでもなさそうで、同メディアによれば「シメオネ側からは『来季は他のリーグでサッカーをしたい』という意向が告げられた。そのためベローナは換金を考えており、2500万ユーロ(約31億円)の移籍金が提示された場合には交渉のテーブルに着く用意がある」という。
地元紙各紙のこれまでの報道では、父ディエゴ氏が監督を務めるアトレティコ・マドリーやマルセイユなどのクラブが移籍先として浮上しているようだ。
そんな中、シメオネは3月4日、ベローナの日刊紙『アレーナ』のインタビューに応え「ベローナの街も素敵なら、住んでいる人はそれ以上。他の場所だと街でもサッカーのことばかり聞かれるけど、ここは違う。もちろんチームもみんな団結している」とベローナ愛を公言。
「エラスが僕のことを買い取ってくれればうれしいと思っている。ベローナの人になりたい」と完全移籍を希望し、「その先に何が起こるかはわからないが、残り11試合に集中したい」と抱負を語った。
Photo: Getty Images
Profile
神尾 光臣
1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。