2月のFIFAクラブワールドカップ2021に北中米カリブ海代表として出場したメキシコの強豪クラブ、モンテレイ。初戦の試合前に開催地UAEのバーで一部サポーターが乱闘騒ぎを起こしてしまったが、その後、本国でもサポーターの言動が注目を集めている。
車を止めて直接、抗議
5回目の出場となったクラブW杯では、初戦でアル・アハリ(エジプト)に0-1で敗れ、サポーターを失望させた。5位決定戦で開催国代表のアル・ジャジーラに3-1で勝利し最低限の面目は保ったが、帰国後もチームは低迷。2021-22シーズン後期リーグの第6節でプエブラに0-1、第7節でアトレティコ・サン・ルイスに0-2と連敗を喫し、ハビエル・アギーレ監督は成績不振により解任された。
プエブラ戦後の練習日、一部のサポーターがトレーニング施設の出入り口にチームを批判する横断幕を掲げ、練習を終えて帰宅する選手たちの車の前に立ちはだかって直接、抗議するという行動に出た。
車を止めて窓を開け、サポーターとの対話に応じたのはエステバン・アンドラーダ、マキシ・メサ、ヘスス・ガジャルド、セバスティアン・ベガス、ロドルフォ・ピサーロの5人のみ。
メサのようにじっくりと話をし、最後は拍手で送られた選手がいた一方、最も強い敵意を浴びたのはFWロヘリオ・フネス・モリだった。直前のプエブラ戦でPKを失敗して敗戦の一因となったこともあり、サポーターは「1分だけ話をさせてくれ」と呼びかけたが、フネス・モリはこれを拒絶。車の窓を開けることなく立ち去ると、サポーターは「たとえ200ゴールを決めても、俺たちはお前を愛さないだろう」と言い放った。
フネス・モリは2015年からモンテレイでプレーしており、公式戦通算133ゴールはクラブのレジェンドである元チリ代表FWウンベルト・スアソを上回るクラブ最多記録だ。現在30歳という年齢を考えると、200ゴール達成も実現可能な数字と言えるが、その前にサポーターとの関係性が悪化してしまった。
ライバルチームのエースが擁護
当人は後日のオンライン会見でこの時の対応について「あの場所にはメディアの人間も大勢いた。自分が何かを発言したら、一部が切り取られて自分に不利な報道をされると思ったから話をしなかった」と弁明し、その場にいたサポーターに対して「マスコミの人間がいない場所で直接、対話をしよう。クラブにはそのための準備をしてもらう。そこで要望を聞きたい」と呼びかけた。
サポーターの批判の的となったフネス・モリを擁護したのは、ティグレスの元フランス代表FWアンドレ・ピエール・ジニャックだ。
モンテレイとティグレスは同じモンテレイの街を本拠地とするライバルチーム同士で、フネス・モリとジニャックは各チームのエースストライカー。「フネス・モリが批判を受けたことに心を痛めている。彼は素晴らしい選手だ。私は彼を支持するし、激励のメッセージを送ったよ」と地元メディアに明かしている。
なお、モンテレイは現地時間3月1日、リーグ第8節でレオンとアウェイで対戦。スコアレスで迎えた終盤にPKを獲得し、フネス・モリではなくルイス・ロモがキッカーを務めたが、あえなく失敗し0-0でタイムアップ。クラブW杯出場の影響で消化試合数が他より少ないとはいえ下位に沈み、苦悩は続いている。
Photo: Getty Images
Profile
池田 敏明
長野県生まれ、埼玉県育ち。大学院でインカ帝国史を研究し、博士前期課程修了後に海外サッカー専門誌の編集者に。その後、独立してフリーランスのライター、エディター、スペイン語の翻訳家等として活動し、現在に至る。