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これが本当の地の利? 「寒すぎて交代」の開催地を巡りアメリカサッカー協会に批判の声も

2022.02.04

 2月2日に行われたFIFAワールドカップの北中米カリブ海予選で、アメリカがホンジュラスに快勝して本大会出場に一歩近づいた。そんな試合で「寒すぎて交代」した選手がおり、物議を醸している。

体感温度は-29℃!

 アメリカはユベントス所属のウェストン・マッケニーやチェルシー所属のクリスティアン・プリシッチなどがゴールを奪い、最下位ホンジュラスを3-0で退けた。残り3試合になり、W杯出場圏内の2位につけているアメリカは、2大会ぶり11回目の本大会出場に向けて視界良好だと言える。

 W杯予選は終盤戦に差し掛かり、さぞや熱い戦いが繰り広げられたと思いきや、前代未聞の“極寒”の戦いになったという。この試合が開催されたのは、アメリカ北部のミネソタ州セントポール市にあるアリアンツ・フィールド(ミネソタ・ユナイテッドの本拠地)。セントポール市の2月の平均最低気温は-11℃だが、この日はさらに冷え込んだ。ハーフタイムに、アメリカ代表は公式ツイッターアカウントに気温「1度」とツイートした。

 「1度」ならばそこまで悪くないと感じられるが、これは摂氏(℃)ではなく華氏(℉)の1度。日本で一般的に使われている摂氏に直すと「-17℃」なのだ。それどころか、スペイン紙『MARCA』などは、風の影響もあって体感温度は「-29℃」だったと伝えている。そのため、選手たちは手袋やタイツだけでなく“目出し帽”まで着用して防寒対策を行った。だが、それでも寒さに耐えられず、『BBC』によるとホンジュラスの選手3名がハーフタイムに「寒すぎる」ことを理由に交代したという。

目出し帽姿でプレーするホンジュラスのGKエドリック・メンヒバル。ちなみに後半からの出場だった

選択理由は移動時間?

 そもそも、なぜそこまで冷え込むミネソタ州・セントポール市で試合を行ったのか。ホンジュラスのエルナン・ダリオ・ゴメス監督は試合前、開催地について「考えられない」と不満を漏らし「まだ試合は始まっていないが、早く終わって欲しい。ただ苦しいだけだから」と語っていたそうだ。

 アメリカ側は開催地の選択理由について移動時間を挙げた。1月30日にカナダのオンタリオ州ハミルトンでカナダ戦を行ったため、そこからの移動時間を考えてアメリカ北部のミネソタ州を選んだそうだ。もちろん、2月でも平均最低気温が15℃という温暖なホンジュラスからやってくる選手たちを苦しめる意図もあったようだ。

 アメリカ代表MFマッケニーは「当然、サッカー協会は相手よりも自分たちにアドバンテージのある最善の開催地を選ぶもの。気候などを含めてね。ホンジュラスの選手よりも僕らの方が寒い場所には慣れているからね」と『Star Tribune』に語っていた。

 さらにアメリカのグレッグ・バーホルター監督も「移動距離」を理由に挙げつつ「反対に敵地では気温35℃、湿度90%の環境で試合をさせられることがある。それが戦いなんだ。今回、我われは安全にプレーできるようにホンジュラスの選手やスタッフ、審判に温かい衣服やヘッドギア(目出し帽)を提供した」と明かした。

「メンタリティが小さい者のやり方」

 当然、今回のアメリカサッカー協会とバーホルター監督のやり方に激怒している者もいる。チェルシーやスコットランド代表でプレーし、現在はアメリカ放送局『ESPN』で解説を務めるクレイグ・バーリーは、試合前日の番組内で開催地の選択を痛烈に批判した。

 「これもアメリカが抱える哀れなジグソーパズルの1つだ。アメリカは人口が多い国だが、“サッカーメンタリティ”は小さい。選手ならば最善のコンディションでプレーしたいもの。自信があるからね。アメリカ代表に若くて優秀な選手がそろっているというのなら、彼らが実力を発揮できる最高のコンディションを用意すべきだ。酷い気候の場所で試合をさせるべきではない。それはメンタリティが小さい者のやり方だ。もし世界の強豪国に追い付きたいのなら、こんな馬鹿げたことをしないで、もっと大きなメンタリティで考えるべきだ」

 現在、北中米カリブ海予選ではカナダが無敗で首位を維持しており、先月末のアメリカ戦にも勝利して1986年大会以来となる本選出場にあと一歩と迫っている。そのカナダをアメリカとメキシコが4ポイント差で追う展開だ。北中米カリブ海予選は上位3チームが本大会に出場し、4位は大陸間プレーオフに回る。


Photos: Getty Images

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アメリカ代表エルナン・ダリオ・ゴメスクリスティアン・プリシッチホンジュラス代表

Profile

田島 大

埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。

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