※2022年1月29日15時に記事タイトルを一部修正いたしました。
イタリアの地元メディアは、フィオレンティーナとユベントスがFWドゥシャン・ブラホビッチの移籍について合意したと一斉に報じた。移籍金は推定で7000万ユーロ(約89億円)。これに成功ボーナスが加わる。
現在ブラホビッチは新型コロナウィルス感染症検査で陽性となったため隔離中で、1月28日にPCR検査を行い、問題がなければ29日にトリノに行ってメディカルチェックを受け、契約書にサインする運びになるという。
契約延長望まず、売却を決意
2018年7月にフィオレンティーナに加入したブラホビッチは、近年、急成長を遂げた。昨季のセリエAで21ゴールを奪い、今季もここまで21試合に出場して17ゴールを稼いでいた。
クラブは2023年まで結んでいた契約の延長を持ちかけたが、ブラホビッチ側は交渉に応じていなかった。他クラブからの引き抜きも予想される中、フィオレンティーナ側は移籍金ゼロで放出することを望まず、先にオファーを受諾する意志を公言した。
1月24日、ダニエレ・ブラデSDはスポーツ専門TV局『スポルトイタリア』に対し「ブラホビッチの移籍金は7000万ユーロに値し、扉はすべてのクラブに開ける。我われは選手と代理人が何を望んでいるのかを知りたい。7500万ユーロの収入があるクラブとして、ドゥサンをただで放出するわけにはいかない」と公言していた。
そこからユベントスは急速に話をまとめて、フィオレンティーナに対してオファーを提示。条件が満たされたためクラブ間合意に至った。
地元紙『クォーティデイアーノ・ナツィオナーレ』は「ブラホビッチはユベントスに行きたがっており、一方でユーベは契約切れを待って獲得したがっていたことをフィオレンティーナ側は把握していた。そのために今回オファーを受け付けることを公言し、ユーベを急かせることにした」と論じていた。
途中放出に賛否両論
フィオレンティーナは補強のためすぐさまバーゼルからFWアルトゥール・カブラルの獲得に動いたが、シーズン途中でブラホビッチを放出した決断には賛否両論がある。『ラ・レプッブリカ』は「ビンチェンツォ・イタリアーノ監督が賛成していなかった」と報じた。
また、契約延長を拒み続けていたブラホビッチには冷淡だと評する向きも多く、ユーベとの交渉が明るみに出てからは本人への抗議の横断幕が貼られたり脅迫があったりした一方、売却を決めたロッコ・コンミッソ会長にも「選手を慰留してクラブを強くするという姿勢が見られないことが一番フィレンツェのファンを失望させる」という声もあり、本人を揶揄するようなフラッグも市内に掲げられた。
一方、攻撃の柱の1人フェデリコ・キエーザが故障離脱したユーベにとっては願ってもない補強だ。以前ユーベの監督を務めたファビオ・カペッロ氏は『コリエレ・デッロ・スポルト』のインタビューで、ブラホビッチについて「技術もパーソナリティもあって、得点を奪える完全なFW。エリアの中に立ってボールを待つタイプではなく、ユーベには欠けていた存在だ」と絶賛した。
Photo: Getty Images
Profile
神尾 光臣
1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。