今冬の移籍市場で日本代表MF三笘薫のチームメイトとなったポーランドの18歳は、最強のメンタルを持つ次世代のスター選手だ。
今月上旬、ポーランド代表MFカツペル・コズウォフスキ(18歳)が三笘と同じようにイングランドのブライトンからベルギー1部のロイヤル・ユニオン・サン・ジロワーズにローン加入した。コズウォフスキは母国ポーランドのポゴニ・シュチェチンでキャリアをスタートさせ、今冬ブライトンに引き抜かれてすぐにベルギーへと武者修行に出された次世代のスター候補だ。
他に類を見ない「自信家」
昨年ポーランド代表デビューを果たし、昨夏のEURO 2020にも出場。グループステージのスペイン戦で17歳246日にしてピッチに立ち、同大会でイングランドのジュード・ベリンガムが樹立していた大会最年少出場記録を更新したのだ。そのためポーランドでは、同国が輩出した欧州最高FWロベルト・レバンドフスキの“次の大物”と騒がれている。
セントラルMFのコズウォフスキは、パスも出せるし、自ら突破してゴールも奪える類稀な才能だ。2019年5月に15歳7カ月にしてポゴニ・シュチェチンでトップリーグデビューを果たすと、着実に階段を駆け上がって2020-21シーズンにはトップチームに定着した。そして代表選手にまで上り詰めたわけだが、彼が若くして成功を収められた最大の要因は、彼のスキルではなく精神面にあるという。
ポーランドのライターにして分析官のミハウ・ザクホドニによると、コズウォフスキは他に類を見ないほどの「自信家」だという。EURO 2020に初出場した試合の後「試合展開が速く感じた?」とザクホドニが尋ねると、彼はこう答えたそうだ。「ノーさ。ロングボールが多すぎたね。もっと僕にボールを預けるべきだった。そうすれば何か特別なことをしてあげたのに」
さらにザクホドニ分析官は、スポーツ専門サイト『The Athletic』でこんなエピソードも明かしている。コズウォフスキはポゴニ・シュチェチンでトップチームの練習に参加し始めて間もなく、自分にパスを回すよう先輩のチームメイトたちに指示したというのだ。「あの自信がなければ、ここまで期待されることもなかったはず」とザクホドニ分析官は説明する。
プレミアで三笘と共演も?
当然、すぐにヨーロッパ中の注目を集めるようになった。そして今年1月、ポゴニ・シュチェチンを離れて海外移籍することになったのだが、リバプールやドルトムント、バルセロナ、アヤックスなど名だたるクラブが興味を示す中で、彼が選んだのはイングランドのブライトンだった。
なぜブライトンだったのか? それはブライトンが近年、若手の育成に力を入れており、三笘薫などの若い才能を集めているからだ。中でも彼らが注視しているのはポーランドのタレント。2020年には、レギア・ワルシャワから当時20歳のDFミハウ・カルボウニクを、レフ・ポズナンから当時21歳のMFヤクブ・モダーをそれぞれ引き抜いた。現在カルボウニクは期限付き移籍に出されているが、モダーはレギュラーの座をつかんでおり、今季リーグ戦20試合に出場している。
その繋がりもあって、またしてもポーランドの若い才能を引き抜くことに成功した。そして三笘の時と同じように、ベルギー1部のサン・ジロワーズで経験を積ませることにした。ちなみにサン・ジロワーズは、2018年にブライトンのオーナーであるトニー・ブルームが買収したクラブである。つまり、首脳陣の目の届くところで経験を積むというわけだ。
そう考えると今後がとても楽しみだ。早ければ来季には、プレミアリーグの舞台で三笘薫とコズウォフスキの共演を見られるかもしれない。
Photo: Getty Images
Profile
田島 大
埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。