セリエA第22節のアタランタvsインテルが大きな反響を呼んだ。国内外でも高い評価を受ける1位と4位の対決はスコアレスドローで決着。しかし均衡はサミル・ハンダノビッチとファン・ムッソの両GKのスーパーセーブによって演出されていたこともあり、90分間に渡って緊張感が持続した内容に賞賛の声は強かった。
各紙絶賛の好ゲーム
『コリエレ・デッロ・スポルト』は「デア(アタランタの愛称)とインテル、奇跡の夜」と見出しを打った。『ガゼッタ・デッロ・スポルト』は「アタランタが主力級の7人を故障や新型コロナウイルス陽性で欠きながら、4バックの緊急布陣にしてインテルを39試合ぶりの無得点に追いやった戦術上の偉業。相手の激しいプレスにエレガントな組み立てができず、スーペルコッパで120分間を戦った疲労も堪えていたインテルだが、それでも苦しみに耐え試合に勝つべく決定機も作った」と好ゲームに至った理由を論じた。
アタランタの本拠地ベルガモの日刊紙『レコ・ディ・ベルガモ』は、地元チームの健闘を深く称えるべく戦術記事も図説付きで掲載。「相手の[3-5-2]に対し、オールコートのマンマークを実行するための[4-2-3-1]。サンチェスとジェコの2トップはパロミーノとデミラルで抑え、両SBは低いポジションからスタートし、相手のWBを高い位置で捕まえる。ブロゾビッチにはコープマイネルスを当て、攻撃陣にはサイドのカバーリングを課した」と解説し、「システムを変えながら戦術上のセッティングは変えなかった、ガスペリーニ監督の傑作だ」とジャン・ピエロ・ガスペリーニ監督の采配を称えた。
ナポリ公式のツイートが議論に
その一方で、この試合に関して第三者となるクラブの公式Twitterが放ったメッセージが騒ぎを呼んでいる。試合直後、ナポリの公式が「カルチョ・ナポリは、正直でスペクタクルな内容のサッカーで構成された素晴らしい試合を展開したアタランタとインテルを褒め称える」と異例の賛辞を公開。この反応には多くの注目を集め、「いいね」が短時間で1万を突破するなどの反響を呼んだ。
しかし、滅多に他クラブの結果にも言及しないクラブがメッセージを出したことで、メディアやファンはさまざまな深読みを始めている。
「『正直』とわざわざ強調したのは、ユベントスvsウディネーゼ戦あたりの結果が正直でなかったというつもりなのか」「この主審が以前の試合で酷い裁定をしたダビデ・マッサ氏だから皮肉のつもりなのだろう」と裏の意図を読もうとする意見や「サポーターを無駄な対立関係に置くようなツイートはやめてほしい」「『正直』がなければ何の問題もなかっただろうに」とツィートに疑問を示した意見もネット上ではあった。
一方、配信サービス『DAZN』のコメンテーターを務めた元イタリア代表MFのマルコ・パローロ氏は「みんないろいろなところで対立があるから、こういうのはイタリアサッカーにとって良いものをもたらすと思う」と、ナポリのエールを素直に評価していた。
Photo: Getty Images
Profile
神尾 光臣
1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。