サンプドリアのマッシモ・フェッレーロ会長が逮捕された。クラブには辞任を申し出ており、経営陣は経営権の譲渡を宣言。地元のサポーターの間に動揺を呼んでいる。
経営権は譲渡が濃厚
逮捕されたのは12月6日で、本人が経営に携わっていた複数の企業の詐欺破産及び企業犯罪の容疑によるもの。カラブリア州のパオラ地検が長く捜査しており、ミラノのホテルに滞在していたところを財務警察によって逮捕された。そのままミラノ市内の刑務所に移送され、現在も身柄を拘束されている。
サンプドリアは声明を発表し「クラブの経営とも、また本人が関わる映画関係の事業とも無関係のこと」だと強調した。
しかし、影響は大きい。フェッレーロ会長はクラブに対し「本人の事業を守ること、またクラブに憶測が及ぶのを避けたい」という理由から担当弁護士を通して辞任を表明。法定上臨時に経営責任者となったジャンルカ・ビダル氏は、「資金の健全性なども含めて検討に入り、4、5カ月の間に経営譲渡を行いたい」と語った。
地元紙の報道によれば、フェッレーロ会長については以前から経営陣の間でも心配を呼んでおり、過去に倒産した事業の和解金をサンプドリアの収入から捻出しようと企てたと見られていたことなどが会話傍受によって明らかになっている。
「監督を“買おう”としていた」
また、フェッレーロ会長がミラノで逮捕されたことを通し、同会長がロベルト・ダベルサ監督の解任に動いていたことも判明した。担当弁護士を通して地元メディアに対し「私は新しい監督を“買おう”としてミラノにいたところを逮捕された」と釈明。セルビア1部ツルベナ・ズベズダのデヤン・スタンコビッチ監督と交渉しようとしていたことがその後の報道で明らかになった。
だが、ツルベナ・ズベズダはその後に「スタンコビッチ監督は今季終了まで残る」と声明を発表し、監督本人も「自分を探してくれるのは幸せなことだが、私自身はツルベナ・ズベズダで幸せにしている」とクラブ残留を宣言した。
地元紙の間では「今後の成績によって再びダベルサ監督の進退が問われるような状況になったとしても、今の状況で他の監督が就任オファーを受諾するかは難しいのでは」との声も上がっている。サポーターも動揺し、前オーナーだったエドゥアルド・ガッローネ氏の邸宅の前に事態の収拾と支援を要請する横断幕を貼るなどの行動を起こしている。
ダベルサ監督は12月9日の記者会見で、フェッレーロ会長について「人としても会長としても尊敬している。この状況が解決されるようにと切に願う」と表明した上で「選手、クラブは一致団結している。大荒れだがそれぞれが自分のオールを手に取って漕がなければならない」とファンにも呼びかけていた。
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Profile
神尾 光臣
1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。