ナポリのルチャーノ・スパレッティ監督が、采配についてサポーターから批判を受けた。好調のFWドリース・メルテンスの交代が早かったからだ。
ゼロトップとして得点量産
メルテンスは第13節のインテル戦で途中交代からゴールを決めて以来、先発でも起用されリーグ戦4試合で5ゴールと非常に勢いがある。故障で長期戦線離脱中のビクター・オシムヘンに代わってCFの座に収まると、各試合でビューティフルゴールを連発しているのだ。
華麗なドリブルで中央のDFを翻弄しシュートをねじ込んだラツィオ戦、密集地でワンツーを通し、正確なトラップから素早くシュートへと移行する技術を見せ付けたサッスオーロ戦。そしてアタランタ戦では、メリフ・デミラルの背後を突いてオフサイドラインをかいくぐり、裏のスペースを独走してシュートをねじ込む抜け目のなさを発揮した。
現在ナポリが採用しているのは、監督がローマ時代にフランチェスコ・トッティを用いて欧州にも衝撃を与えたあの「ゼロトップ」だ。指揮官は地元メディアに対しての記者会見で「ドリースがいれば基準点を置かない[4-2-3-0]が機能する。相手のCBにとっては、小さくて消える動きもうまいメルテンスは屈強なストライカーよりも捕まえにくい」との評価を口にした。
基本的にはローマのトッテイの頃と少し違い、最前線に張ってエリア内にも頻繁に侵入する。ただし相手CBに対しては巧みに動いて視界から消え、ボールに細かく触って味方とも連携しながらシュートへと向かい、ゴールを稼いでいる。
優先すべきはコンディション維持
しかし、スパレッティは過密日程の中、メルテンスに一度も90分間プレーさせていない。サッスオーロ戦、アタランタ戦ともに60分程度の起用できっちりと交代させている。問題はその2試合でリードを失い、引き分けないしは敗戦で終わったことだ。
ネット上では「あまりに性急過ぎた」「スパレッティは落ち着いて考えることかできていたのか?」なとの批判が相次いだ。
もっとも、プライオリティは慎重にメルテンスを扱ってケガをさせないことにあるようだ。スパレッティ監督は故障者が続出する中、「これだけ日程が接近していると何か起こるか分からない。選手はロボットではない。フィジカルだけでなく、メンタルにおいても休ませる時間が必要だ」と説いていた。
『コリエレ・デッロ・スポルト』等の地元紙はメルテンスの交代策そのものへの批判は抑えており、「メルテンスは34歳。故障の予防という観点からも、ターンオーバー制などによる選手の保護は必要だ」と論じていた。
しばらくはオシムヘンが試合に出られない状態が続く。「スパレッティ監督はメルテンスに休養をさせる時を見越して、アダム・ウナスを『偽9番』として起用する準備をしている」という報道も出ている。
Photo: Getty Images
Profile
神尾 光臣
1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。