ユベントスに選手の移籍金取引などを含めた不正な会計処理の疑いが浮上し、当局の捜査が続いている。11月3日にはクリスティアーノ・ロナウド(現マンチェスター・ユナイテッド)の契約および未払い分の報酬に関し「あってはならない書類があった」とされ、当局が強制捜査で書類の押収を図ったという。
360億円近い不正水増しか
問題とされているのは、2018-19シーズン、2019-20シーズン、2020-21シーズンの会計処理。架空の請求書の発行や上場企業としての虚偽報告の疑い、選手の代理人に対する報奨金の支払いや架空の選手取引、また選手の移籍においては評価額が実質上の価値よりも多く見積もられた上で取引が行われ、3期合計で約2億8200万ユーロ(約359億円)ものキャピタル・ゲインが不正に水増しされていたとの疑いで捜査が行われている。
現在までのところ、アンドレア・アニェッリ会長にパべル・ネドベド副会長、そしてファビオ・パラーティチ前SD(現トッテナム)ら7人が取り調べの対象となっている。
捜査上では不正の存在を疑わせる会話傍受記録なども上がってきており、『ANSA通信』は財務警察が把握している情報として、クラブの相談役を務める弁護士がロナウドの放出に関し「理論上あってはならない書類がある。あれが出てきたらバランスシートといい監査といい、我われは皆責められることになる。だから多分架空の取引をしなければならない」などと発言していたと報じた。
処分の内容は不透明
クラブは捜査に協力する姿勢を打ち出しながら、スポーツ上の慣例に沿った上で不正はしていないとの立場を明確にしている。フェデリコ・ケルビーニSDは9時間に渡る事情聴取に応じ、「パラーティチ元SDの下で行われた取引は正当なものであり、我われは規則に則って取引を行ってきた」とクラブの立場を説明したという。
ユベントスがどのような処分を受けることになるのかについては、現時点では不透明だという見方が強い。
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』は「単にイタリアサッカー連盟(FIGC)の規約に接触しただけならば罰金程度だが、一方で不正がリーグやUEFAチャンピオンズリーグ等の参加ライセンス取得資格に接触することが決定的となった場合は、勝ち点の減点や降格、あるいはリーグからの登録抹消なども考えられる」と報じた一方、地元メディアの中には「捜査当局が書類の押収に躍起になっているのは、証拠が見つかっていないという証左なのではないか」と報じるところも出てきている。
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Profile
神尾 光臣
1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。