ベルギーリーグ屈指のMFとして高く評価される森岡亮太。今季もシャルルロワを主力として牽引し、好調のチームを支えている。10月11日にシャルルロワとの契約を2024年まで延長し、充実したシーズンを送る森岡と、今季が監督デビューとなる若手指導者エドワード・スティルが率いるシャルルロワについて触れたい。
主力放出で節目のシーズンに
昨季は開幕6連勝と絶好のスタートを切ったものの、中盤戦以降に失速し、最終的には13位で終了したシャルルロワ。2019-20シーズンには失点の少なさがリーグ2位と堅守を誇り、3位で終了したが、自慢の守備は崩壊。エースのカーベ・レザイーは不振にあえぎ、得点力不足に泣いた。シーズンを通して安定していた森岡も、後半戦はケガに泣いた。
シーズン終了後、イラン系フランス人のメフディ・バヤト会長は、フランス人のカリム・べロシーヌ監督(現コルトレイク監督)を解任。長年チームを牽引してきたフランス人GKニコラ・ペヌトゥー、ベルギー人DFドリアン・ドゥソレイユ、エースストライカーのレザイーもチームを去った。
30歳の新人監督が就任
バヤト会長は、新生シャルルロワを率いる監督としてスティル氏の招聘を決めた。イングランド系ベルギー人のスティルは、ベルギー中央部のブレン・ラルーで生まれ育ち、幼少期から選手としてのキャリアを始めた。昨季途中にベールスホットで史上最年少となる28歳で監督デビューを飾り、現在スタンダール・リエージュのアシスタントコーチを務めるウィム・スティルは実弟だ。
スティルは15歳の頃にラシン・ジェット・ウォーブルのU-17チームに昇格できず、選手としてのキャリアは終了した。イングランドのラフバラ大学、ベルギーのルーヴァンカトリック大学、エラスムス大学ロッテルダムを経て、2015年9月にシントトロイデンのビデオアナリストとして指導者の道を歩み始めた。
2016年に転機が訪れ、シントトロイデンの監督にクロアチア人のイバン・レコ監督が就任。指導者としての素質を見抜かれたスティルは、17年にレコとともにクルブ・ブルッヘに移籍。2017-18シーズンは圧倒的な成績でリーグ優勝を達成した。2019年を最後にレコは退任したが、2020年にはアントワープ、今年1月には中国の上海海港と、レコの右腕として帯同した。
今年7月、シャルルロワは、新監督としてスティルの招聘を決めた。30歳での就任は、今季のベルギーリーグでは最年少となった。
シャドーでプレーする森岡亮太
ベルギー紙『Le Soir』では、スティル監督によって変貌したシャルルロワのプレースタイルを評価し、大きな要因として森岡を擁する3センターに注目している。
今季のシャルルロワは、システムは[3-5-2]を採用している。森岡は3シーズンに渡ってコンビを組んでいるマダガスカル代表MFマルコ・イライマハリトラに加え、新加入となった21歳のアルジェリア代表MFアダム・ゾルガンと3センターを組んでいる。守備的な役割を得意とするゾルガンの加入によって森岡亮太とイライマハリトラの守備負担が減り、攻撃面で重要な役割を担うことになった。
過去のインタビューで森岡は、ベルギーリーグ初年度で得点を量産していたワースラント・ベフェレンとアンデルレヒト所属時に担っていた役割は「10番」、昨季までの2シーズンは「6番」と称していた。今季はその中間に値する「8番」を担うことになっている。昨季より守備負担が減り、攻撃面で重要な役割を担う時間帯が増えるようになった。カウンター一辺倒だった昨季と異なり、攻撃的な両WBの特性を生かしつつ、ボールポゼッションからも多くのチャンスを作り出している。
システムの変更により、昨季はセカンドトップとして活躍していたイラン代表MFアリ・ゴリザデ、セネガル人MFママドゥ・ファルとポジションを争うことになったが、ラストパスとボール奪取をこなし、今季も高評価を受ける森岡は、ポジションを守っている。監督が代わるごとに役割も大きく異なるが、リーグでは相変わらず高い評価を受ける森岡の今後に期待したい。
Photo: Getty Images
Profile
シェフケンゴ
ベルギーサッカーとフランス・リーグ1を20年近く追い続けているライター。贔屓はKAAヘントとAJオセール。名前の由来はシェフチェンコでウクライナも好き。サッカー以外ではカレーを中心に飲食関連のライティングも行っている。富山県在住。