去る9月9日にテストとして有観客で開催されたW杯予選アルゼンチンvsボリビア戦を除き、昨年3月10日以来、新型コロナウイルス感染拡大の影響によって無観客試合が続いていたアルゼンチンだが、10月1日からリーガ・プロフェシオナル(1部リーグ、以下リーガ)でスタジアム収容人数の50%を上限とする観客入場が許可されることとなった。
8月に最初の“犠牲者”が
多くのクラブが財政難を抱える中、1年半もの月日を経てついに実現する運びとなったサポーターのスタジアム帰還。10月3日に行われるリーベルプレートvsボカ・ジュニオールのスーペルクラシコでは特に盛り上がることが予想され、リーガ周辺は賑やかな話題に包まれているが、その一方で見過ごすことのできない現象も起きている。
リーガの後期全25節のほぼ中間地点にあたる第12節終了時点で、8チームが監督を交代させる事態となっているのだ。
事情はケースによって異なるものの、解雇された者、辞任を余儀なくされた者を含め、いずれも退任に至った原因は「成績不振」。
最初の“犠牲者”となったのはラシンのフアン・アントニオ・ピッシ監督で、3月のスーペルコパ・アルヘンティーナでリーベルに0-5と大敗した後、前期は決勝でコロンに敗れて優勝を逃し、コパ・リベルタドーレスのベスト16でもサンパウロ相手に敗退。8月8日に行われた第5節のインデペンディエンテとのクラシコで0-1の敗戦を喫したことが決定的となって退任に至った。
降格なしでも監督には重圧
続いて解雇されたのが、ボカのミゲル・アンヘル・ルッソ監督。2019-20シーズンを制覇した後、昨年リーグ戦に代わって開催されたコパ・マラドーナでも優勝を遂げていたが、今年に入ってからはコパ・リベルタドーレスでベスト16敗退が決まったこと、リーガ後期の戦績が思わしくなく下位で低迷していたことなどから、クラブ側が解任の決断を下した。
その後もセバスティアン・メンデス(ゴドイクルス)、レアンドロ・マルティーニとマリアーノ・メセーラ(ヒムナシア)、グスタボ・コレオーニ(セントラル・コルドバ)、セルヒオ・ロンディーナ(アルセナル)らが退任し、9月23日にはレオナルド・マデロン(プラテンセ)とフアン・マヌエル・アスコンサバル(ウニオン・デ・サンタフェ)の2人が辞めることになった。
リーガではコロナ禍による経済的な背景を考慮して来年12月まで降格制度が廃止され、プレッシャーのない状況下での得点率の低下と内容の乏しさが指摘されているが、その裏で監督には即時結果を求めるプレッシャーがかかっていることも事実だ。
サッカー専門メディアはこの状況を深刻なものとして受け止めており、「残り13節でさらに職を失う監督が出る可能性が高い」としている。
Photo: Getty Images
Profile
Chizuru de Garcia
1989年からブエノスアイレスに在住。1968年10月31日生まれ。清泉女子大学英語短期課程卒。幼少期から洋画・洋楽を愛し、78年ワールドカップでサッカーに目覚める。大学在学中から南米サッカー関連の情報を寄稿し始めて現在に至る。家族はウルグアイ人の夫と2人の娘。