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“ミラクル”終焉。キエーボ、財務上の規則違反でアマチュアリーグへ

2021.08.06

 セリエBに所属していたキエーボが、会計監査上の問題により新シーズンの参戦クラブから除外されることとなった。

2度の控訴も却下

 昨シーズンは8位でフィニッシュし、2年連続のプレーオフ進出を果たしたものの敗退。しかしキエーボはそれと並行して、イタリアサッカー連盟(FIGC)内の会計監査委員会から、税務局に対する負債の分割払いの証明などの財務上規則違反があったことを指摘されていた。

 ルカ・カンペデッリ会長をはじめとしたクラブの首脳陣は書類の再提出を行い、期限として設定されていた6月28日までに会計処理を終了させようと努めた。しかし7月15日、FIGCの理事会はセリエBからの除外を決定。セリエBにはコゼンツァが再昇格することになった。

 キエーボはこれを不服とし、すでに2度の控訴を行った。だが7月26日には、上部団体であるイタリアオリンピック協会の仲裁委員会が却下。その後ラツィオ州行政裁判所(TAR)でも8月3日にセリエBの除外決定の差止め要求がはねのけられた。

 キエーボはイタリア国務院に控訴する意向を表明したが、決定が覆るのは難しいと見られている。そしてその場合は規定に沿えば、アマチュアの最高カテゴリーであるセリエD(4部)からやり直しとなる。

 1986年以来35年にわたってプロリーグのカテゴリーに居続け、2000年初頭にはセリエAに初昇格を果たすや旋風を起こし、UEFAカップ(現UEFAヨーロッパリーグ)や予備予選とはいえUEFAチャンピオンズリーグに参加した奇跡の地方クラブの歩みは、ここで一旦逆戻りすることが濃厚となった。

有望選手は引き抜きも

 キエーボがセリエBの登録から認められなかったことは、実はセリエAを含む他のクラブの補強戦略にも少なからぬ影響をもたらす。FIGCがキエーボとプロ契約を結んでいた選手の登録を解除し、その中には強豪クラブから目をつけられていた下部組織出身の若手も存在するからだ。

 年代別代表の常連で、17歳のファンタジスタであるFWサムエル・ビニャート(ボローニャでプレーするエマヌエル・ビニャートの弟)や、19歳のレジスタとしてプリマベーラの主将だったMFエマヌエーレ・ズエッリらは、インテルやユベントスのスカウトが日頃から動向をチェックしているともっぱらの評判だ。

 昨季はトップチームで正GKを務めていたクロアチア人のアドリアン・センペルや、FWの一角として活躍したマヌエル・デ・ルカは、即戦力としてプロビンチャのAクラブからも興味を示されている。

 ただ、このFIGCの措置に対しても、クラブは不法であるとして異議を求める方針だという。また、レッチェのパンタレオ・コルビーノSDは「いくら移籍金がかからずに獲得できるといっても、年俸や代理人への手数料などで金がかかる」という理由で、フリーエージェントとなったキエーボの選手を獲得しない方針を示した。


Photo: Getty Images

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Profile

神尾 光臣

1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。

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