あのダニエル・スタリッジがマジョルカで練習参加を許されて話題になっている。
スタリッジと言えば、マンチェスター・シティやチェルシー、リバプールなどを渡り歩き、イングランド代表としてはブラジルW杯やEURO2016に参戦した超大物だが、昨年3月にトラブゾンスポルから契約を解除された後は「所属クラブなし」となり、忘れられた存在になっていた。
賭けへの関与で処分受ける
リバプール時代の2017-18シーズン以降、度重なるケガに泣かされ低迷するも、2019-20シーズンのトラブゾンスポルでは16試合で7ゴールと復活の兆しを見せていた。だが、その矢先の2020年3月、UEFAから4カ月間の出場停止処分を受け、そのままクラブと契約解消となった。
出場停止の理由は、賭けに関与したこと。2018年夏、リバプールとセビージャの間で移籍話が持ち上がっていた際に、家族にセビージャ移籍に賭けるよう指示をしたとされる(セビージャとは結局破談)。
そもそもサッカー選手はすべての賭け事に直接的にも間接的にも参加することを禁止されているが、スタリッジの場合は当事者にしか知り得ない内部情報を利用して金を儲けようとした。いわば株の世界の「インサイダー取引」のような不正だった。
今年1月、アトレティコ・マドリーのキーラン・トリッピアーが自身のアトレティコ・マドリー入りを賭けの対象として10週間の出場停止を受けたことを思い出す人もいるだろう。
大物の加入、過去には成功例も
近年のケガの多発に加え、不正のマイナスイメージもあって引退の危機に追い込まれていたわけだが、そこに目を付けたのが1部に昇格したばかりのマジョルカだった。
久保建英が所属した一昨季に降格した二の舞を避けたい彼らは今、急ピッチで補強を進めている。すでにアンヘル・ロドリゲス(前ヘタフェ)、ジャウメ・コスタ(前ビジャレアル)を獲得。スタリッジがこのまま加入すれば、復帰の噂がある久保とともに新シーズンの大きな目玉になるだろう。
下り坂の大物がリーガの弱小クラブに加入するケースとしては、最近では2016-17シーズンのデポルティーボに加入したライアン・バベルや、同シーズンのラス・パルマスのケビン・プリンス・ボアテングの例がある。
スペインの気候が良いのか、オープンなサッカーが合うのか、思わぬスターの到来で熱狂するファンの歓迎に気を良くしてなのか、いずれも大成功に終わり、再評価されてその後のキャリア延長に成功している。
1年半のブランクは気になるが、スタリッジはまだ31歳。あの力強いゴールゲットをまた見たいと思うのは、私だけではないだろう。
Photo: Getty Images
Profile
木村 浩嗣
編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。