「パンツァー・ゴセンスがロナウドを叩きのめす」
アタランタの本拠地ベルガモの地元紙『エコ・ディ・ベルガモ』紙は6月20日、スポーツ欄にこのような見出しを立てた。19日に行われたEURO2020のポルトガルvsドイツ戦で、自らのゴールを含むドイツの3得点に絡んだロビン・ゴセンスの活躍を称えてのものだ。
鮮烈なプレーで左サイドを支配
ジャン・ピエロ・ガスペリーニ監督の薫陶を受けて所属クラブで急成長し、特に最後の2シーズンは66試合20ゴールと、ほぼ3試合に1ゴールのペースでゴールを決めていた左アウトサイド。そんな彼が自国の代表に選ばれて鮮烈なパフォーマンスを発揮したことは、クラブの地元でも誇りとして受け止められていた。
序盤から積極果敢にアウトサイドのスペースを攻め立て、35分に左クロスでOGを誘うと、その4分後にはカイ・ハフェルツのゴールをクロスでお膳立てした。
左アウトサイドのレーンを確保し、大外から中へと切り込むゴセンスの動きを把握できないポルトガルを傍目に、後半には右サイドからのクロスをヘディングで叩き込むなど、アタランタで磨いたプレーを存分に発揮した。
ユニフォームを巡る因縁
地元紙がゴセンスにクリスティアーノ・ロナウドを引き合いに出していたのには、ある“因縁”が存在する。今年4月、彼は自叙伝の中で「前からロナウドのユニフォームが欲しくて、試合後に交換するようお願いしたことがあった」と明かした。しかし2019年1月のユベントス戦後(3-0でアタランタが勝利)に依頼した結果「顔も見ずに『ノー』と断られた」。
後日、それを知ったハンス・ハテブールらのチームメイトは「ヤツが気前良くなるには試合に勝たなきゃダメだから、だったらロビンには引き続き何ももらわないでいてもらおう」と、自前でユベントスの背番号7のユニフォームを用意してプレゼントしたという。
このエピソードはイタリアのサッカーファンの間で広く知られることとなり、ポルトガルvsドイツ戦後にはネット上で「ロナウドがゴセンスにユニフォームをねだる番だな」などのコメントが多く見られた。
注目されるのはゴセンスの市場価値だ。母国ドイツではまったくの無名で、オランダでプレーしていた彼をアタランタは約117万ユーロ(成功ボーナス含む)の移籍金で獲得した。その価値は4シーズンで急上昇。『エコ・ディ・ベルガモ』紙は「4000万ユーロ以上のオファーが来る可能性がある」としているが、アタランタはクリスティアン・ロメロにも巨額の移籍金オファーの打診を受けており、「犠牲とするのはどちらか1人とクラブは考えている」と報じた。
なお、ゴセンスは試合後、イタリア衛星放送『スカイ・スポーツ』のインタビューに対して「アタランタのサポーターの皆さんは大好きだ。近いうちに会おう」と語った。
Photo: Getty Images
Profile
神尾 光臣
1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。