政情不安のコロンビア、新型コロナウイルスの第二波による被害が大きいアルゼンチンでの共催が不可能となり、5月31日に急遽ブラジル開催が決まったコパ・アメリカ。
当初は代替開催国にチリやエクアドルが挙げられ、アメリカのMLSからは招致への具体的なオファーが届き、最終的には前回の2019年大会に続いてブラジルで行なわれることとなったが、その後も様々な問題が浮上した。それでも6月10日夕刻、ブラジルの最高裁判所が開催を正式に承認し、全10カ国の代表チームも登録メンバーのリストを南米サッカー連盟に提出。開幕を3日後に控え、ようやく準備が整った。
懸念の中で強行開催
一時はその「様々な問題」が大会を中止に追い込むのではないかと報じられる状況にあった。新型コロナウイルスによる被害が世界で2番目に多く、いまだ感染拡大の真っ只中にある自国での開催に猛反対するブラジル代表の一部主力選手がボイコットの意思を示し、各国の代表チームのキャプテン同士で見解を確認し合った他、自国開催を全面的に支持するジャイール・ボルソナロ大統領に反発するブラジルの議員が大会の阻止を求めるなどの動きが見られたのである。
コロナ禍の真っ只中で行なわれる今大会については、ブラジル開催が決まる前からウルグアイのエディンソン・カバーニとルイス・スアレスをはじめとする個人が疑問を公言していたが、チーム単位での「ボイコット」が取り沙汰されたのは、治安上の問題を理由にアルゼンチン代表が参加を辞退した2001年コロンビア大会以来のこと。
今回は結局、ブラジル代表の選手たちが開催国決定までのプロセスに「納得がいかない」と反発し、FIFPro(国際プロサッカー選手連盟)からも「選手、スタッフ、一般の人々の健康に深刻な影響を及ぼす可能性がある」との懸念を示す声明を公表する異様な状況下で大会が行われることとなった。
スポンサーが続々と撤退
そんな中、コパ・アメリカのスポンサーであるマスターカードが、今大会のブラジルでの宣伝活動を一切行わないことを発表した。
マスターカードは1992年から冠スポンサーとしてコパ・アメリカをサポートしているが、今回は「状況を慎重に分析した上での決断」として、ブラジル国内に限りスポンサー活動を休止し、他の国では通常通り宣伝を継続するという異例の判断を下した。
これに続き、アンベブ社とディアジオ社も「パンデミックの収束に協力する組織的な行動をとるため」としてスポンサーを降りた。アンベブはブラジルを代表するビールの「ブラーマ」や「スコール」、ディアジオは「ジョニー・ウォーカー」や「スミルノフ」などを製造する大手酒造メーカーで、いずれもサッカーファンに馴染みのある看板商品。これらスポンサー3社の降板は経済的な損失のみならず、国際社会に与える印象も大きいと考えられている。
Photo: Getty Images
Profile
Chizuru de Garcia
1989年からブエノスアイレスに在住。1968年10月31日生まれ。清泉女子大学英語短期課程卒。幼少期から洋画・洋楽を愛し、78年ワールドカップでサッカーに目覚める。大学在学中から南米サッカー関連の情報を寄稿し始めて現在に至る。家族はウルグアイ人の夫と2人の娘。