5月27日、セリエBのプレーオフ決勝第2戦が行われ、ベネツィアが2試合の総合成績でチッタデッラを上回って19年ぶりのセリエA昇格を決めた。
プレーオフで見せた快進撃
シーズンを5位でフィニッシュしプレーオフに進出したベネツィアは、一発勝負の予選で8位のキエーボを下し、準決勝では4位のレッチェを倒して決勝に進出。そして決勝ではアウェイの第1戦で勝利を収め、有利な状況でホームの第2戦を迎えた。試合は新型コロナウィルス感染症対策のため無観客で行われることとなったが、サンテレナ地区のスタジアム周辺には約2000人のサポーターが集結し、スタジアムの選手たちに声援を送った。
試合はリードを気にして慎重に入ったところをチッタデッラの圧力に押され、主導権を握られた挙げ句に先制ゴールを決められる展開に。さらに前半終了間際にパスクワーレ・マッゾッキが不用意なファウルから2枚目のイエローカードを受けて退場となるが、ここからベネツィアはチーム力を発揮した。
途中出場のルカ・フィオルディリーノを軸に守備ブロックを固めて懸命に相手の猛攻をしのぎながら、途中出場したデニス・ヨンセンとリッカルド・ボカロンがカウンターで流れを切る。そしてアディショナルタイムに、そのボカロンが同点ゴールを決めて昇格を手繰り寄せた。
会長も運河に飛び込む
かつては名波浩氏もプレーしたベネツィアだが、2002年に降格してからは苦労の連続だった。降格して間もなくマウリツィオ・ザンパリーニ会長がクラブを手放し、その後3年で経営破綻。新会社の下で立て直しを図るが、慢性的な経営難は解消されず、セリエA復帰どころかクラブの存続が目標となるような状態が続いた。
しかし2015年、ジョー・タコピーナ氏率いるアメリカの資本家集団が経営権を取得すると運命が上向く。2年でセリエBへの復帰を果たすと、4年でセリエAの昇格を勝ち取った。
今季は残留を第一目標に戦力が組まれていたが、パオロ・ザネッティ監督の下で質の高い攻撃サッカーを展開して上位を快走し、プレーオフを勝ち抜いて悲観を達成した。38歳の指揮官は中継を担当した配信サービス『DAZN』のインタビューに「ベネツィアは若手や降格を経験した選手、また解任を経験した監督で作られたチーム。今日の試合で現れていたのはそんなグループのスピリットだ」と涙を浮かべながら語った。
そして”決勝ゴール”を決めたボカロンは地元ベネツィアの出身。「僕はスタジアムの近くで生まれたんだ。この気持ちはわからないだろ!」と喜びを爆発させていた。
試合後はファンやクラブ関係者に続き、ダンカン・ニーデラウアー会長まで運河に飛び込むなどして喜びを爆発。今後はウディネーゼなどからも誘いを受けているというザネッティ監督の慰留や、セリエA開催規格を満たせないホームの代替開催地の選定などを課題に、トップカテゴリーへの準備を進める。
Photo: Getty Images
Profile
神尾 光臣
1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。