4月21日、FIFA本部において東京オリンピックの男女サッカー競技の組み合わせ抽選会が行われた。男子のU-24日本代表はメキシコ、南アフリカ、フランスと同組という“死のグループ”に入り、早くも危機感が漂っている。
対戦相手が決まったらいよいよチームの構築に入るわけだが、日本が2戦目で対戦するメキシコ代表は、早くも入念な根回しを行っているようだ。
「すべてうまくいっている」
各国のサッカー協会は五輪について選手の拘束力を持っていないため、所属クラブ側は選手の派遣を拒否することができる。日本関連では2016年リオデジャネイロ五輪の際、スイスのヤング・ボーイズが土壇場になって久保裕也(現FCシンシナティ)の派遣を拒否した事例がある。
こうした問題を避けるべく、出場国の協会スタッフは選手の所属クラブと綿密に連絡を取り合い、出場の許可を取り付けなければならないのだが、メキシコのハイメ・ロサーノ監督は4月30日、エドソン・アルバレス(アヤックス)、ディエゴ・ライネス(ベティス)、ヘラルド・アルテアガ(ヘンク)の3人について「所属クラブと交渉し、彼らを提供してもらえることになった」ことを明らかにした。
ロサ―ノ監督が「すべてうまくいっているように思えるし、彼らを考慮に入れることができるだろう」と語っている通り、メキシコにとっては間違いなくグッドニュースだ。アルバレスはボランチもこなせる大型CBで、すでにA代表でも35キャップを刻んでいる。ロシアW杯でも4試合に出場するなど、24歳以下の選手とは思えないほどの経験を有している。
ライネスは20歳のアタッカー、アルテアガは22歳の左サイドバックで、この2人もキャップ数は1桁台ながらA代表歴を持っている(ライネスは9試合、アルテアガは7試合)。当然、U-24代表では主力を務めるだろうし、初戦で対戦する日本にとって警戒すべき相手になることは間違いない。
35人にワクチン優先接種も
「非常に満足しているし、興奮している」と語るロサーノ監督の目はすでに本大会に向いている。
「どの会場で、どの国と対戦するかも明らかになった今、我われは万全の準備を進めなければならない。代表監督の仕事の多くはオフィスで行われるものだが、とにかく最良の状態で日本に上陸できるよう尽力していきたい」
ロサーノ監督は当初、東京五輪に向けて50人程度の候補選手リストを作成したそうで、現在はそこから「35人程度に絞り込んだ」ことを明かしている。
メキシコは日本と同様、新型コロナウイルスのワクチン接種が進んでいない状況だが、その中で東京五輪に出場するアスリートに対しては優先接種を行っている。ロサーノ監督は「この35人はワクチン接種を受ける予定だ」としつつ、「東京五輪のメンバーから外れ、優先的にワクチンを接種しただけ、という選手も出てくるだろう」と語っている。
Photo: Getty Images
Profile
池田 敏明
長野県生まれ、埼玉県育ち。大学院でインカ帝国史を研究し、博士前期課程修了後に海外サッカー専門誌の編集者に。その後、独立してフリーランスのライター、エディター、スペイン語の翻訳家等として活動し、現在に至る。