カタールW杯欧州予選で北アイルランド、ブルガリアに順当勝ちし、幸先の良いスタートを切ったイタリア。故障離脱者も多い中で各選手が上々のパフォーマンスを発揮し、6月から始まるEURO2020にも期待が高まっている。
だが、大会を迎えるにあたって、この国には1つの懸念材料がある。それは代表チームの状態というより、果たして本大会は無事開催できるのか、という見通しだ。
「観客を保証しなければならない」
欧州各地で分散開催となるEURO2020は、イタリアではローマのスタディオ・オリンピコで3試合が予定されている。新型コロナウイルス感染症対策のため、現在サッカーをはじめとしたプロスポーツは無観客での開催がようやく認められている状態だが、欧州サッカー連盟(UEFA)は観客を入れた開催を希望している。
UEFAのアレクサンダー・セフェリン会長は伊TV『スカイ・スポーツ』の取材に対し「我われはあらゆる方策を検討しているが、ただ1つ言えることは、観客のいないスタジアムでEUROを実施することなど論外だということ。どの会場も観客の保証をしなければならない」と語った。
イタリア地元紙によれば、UEFAはスタジアムの収容観客数の20%分を保証するように要求。そして伊サッカー連盟(FIGC)はUEFAに対し、有観客の開催が可能かどうかの返答を4月7日までにしなければならないという。
しかし、それは可能なのか。欧州の他国では観客を入れ始めようとしているところも出てきてはいるが、イタリア国内の見通しは明るいものとは言えない。
人々の見解は真っ二つ
現在は変異種を要因としたウイルス感染の拡大が懸念されるという理由で、ロックダウンが4月いっぱいまで延長されたばかり。映画館やスポーツジムの開場、レストランやバールなどでの店内飲食が禁止となっており、労働などのやむを得ない用事を除き、州をまたいでの移動も禁じられている。
このような状況では人々の見解も真っ二つ。地元紙は医療関係者にコメントを求めたが、「ワクチンの接種が進み、感染カーブも減少する。そして6月には50%を超える集団免疫の獲得に成功するから、部分的に観客を入れられる」と楽観視する声と「6月の感染者数を正確に予測もできないのに、集客が可能かどうか検討できる段階にはない」と否定的な声とが二分していた。
FIGCのガブリエレ・グラビーナ会長は、チケット購入者にアプリをダウンロードさせ、PCR検査を受けた際の結果や、ワクチン接種記録を表示させる形での対策案を政府に提示する考えがあるという。
また、EUROに先立ってローマでは5月にテニスの国際大会「BNLイタリア国際」が行われるが、観客を入れるか否かの判断は4月6日以降に行われると見られており、その判断も影響しそうだ。
Photo: Getty Images
Profile
神尾 光臣
1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。