ニューウェルスが新監督にヘルマン・ブルゴスの就任が決定したと発表したのが3月14日。前日まではブルゴスと個人的に繋がりのあるジャーナリストが「報酬面での折り合いが付かない」と報じていただけに、突然の公式発表はアルゼンチン国内でちょっとしたサプライズとなった。
ビエルサばりの精力的な動き
昨年7月にアトレティコ・マドリーに別れを告げた後、監督としてのキャリアを本格的にスタートさせるための準備を進めていたブルゴス。本人によると「メキシコのクラブ・アメリカとは合意寸前まで話が進んでいた」というが、最終的に母国の名門ニューウェルスを新天地に選んだ。
監督就任が正式に発表されるや、ブルゴスは即ニューウェルスの選手たちとオンラインミーティングを行い、翌15日のトレーニングメニューを説明。監督不在のまま、チームは早速「ブルゴス式」の活動をスタートさせることとなった。
そして16日朝、ブルゴスはアルゼンチンの首都ブエノスアイレスの空港に到着。集まった報道陣に「一歩前進して賭けに出る時が来た」と語り、自身にとって大きなステップであることを強調した。
また、自分を監督に選んだニューウェルスに対し「これからは私のチーム。信頼してくれたことに感謝している」と語った。
ブルゴス以下指導スタッフ全員は空港からそのまま車でロサリオに直行。約2時間後にはクラブ施設でPCR検査を行い、陰性結果が確認されるや午後のトレーニングの準備を開始した。サッカー討論番組のパネリストたちが「まるでビエルサのようだ」と感嘆するほど、文字通り休む間も惜しんで仕事に打ち込んだ。
「決勝を戦うために来た」
3月18日にはクラブの本拠地エスタディオ・マルセロ・ビエルサで就任会見が行われ、会見中に背後のボードが倒れてブルゴスに当たるというハプニングもあったが、「私は大丈夫だ。質問を繰り返してくれないか」と冷静に対応。
新天地での抱負について「毎試合が決勝戦。このクラブは過去の歴史の中で、精神的にもフィジカル的にも強いことを示してきた。今、我われは勝てるチームなのだということを示す必要がある。私は決勝を戦うために来た」と意欲満々の姿勢を見せ、「私が笑顔を見せるのは勝った時だけ」とも言い切った。
そして19日、リーグ第6節のvsウニオン戦で早速デビューを飾った。試合はスコアレスドローに終わり、チームは8試合も勝てない状態が続いているが、地元メディアの取材に対し「自分にはチームを背負う能力も経験もある。それは間違いない。私は信念を持った男であり、ニューウェルスを前進させるために全力で戦うつもりだ」と力強くコメント。
「私が指導者として影響を受けたビエルサもアメリコ・ガジェゴも、そして私が長年過ごしたアトレティコの往年のスター、ホルへ・グリッファも皆ニューウェルスのレジェンド。私がここに来たのは偶然ではなかった」としながら、クラブへの帰属意識を感じさせた。
ブルゴス監督の次の試合は3月29日のvsアトレティコ・トゥクマン戦となる。
Photo: Getty Images
Profile
Chizuru de Garcia
1989年からブエノスアイレスに在住。1968年10月31日生まれ。清泉女子大学英語短期課程卒。幼少期から洋画・洋楽を愛し、78年ワールドカップでサッカーに目覚める。大学在学中から南米サッカー関連の情報を寄稿し始めて現在に至る。家族はウルグアイ人の夫と2人の娘。