2月13日のスペツィア戦で敗れ、首位をインテルに明け渡してしまったミラン。スクデット争い、そしてUEFAヨーロッパリーグのノックアウトステージが佳境に入る中、彼らには1つの懸念事項がある。エースストライカーのズラタン・イブラヒモビッチが、3初旬の1週間、チームから離脱することになったからだ。理由は、サンレモ音楽祭にゲスト出演するためである。
昨年末に出演契約を締結
サンレモ音楽祭とは、1951年からリグーリア州のサンレモを会場に開催されるイタリアのポピュラー音楽の祭典である。今年は3月2日から6日の予定で開催され、音楽祭の様子は連夜国営放送『RAI』で生中継されることになる。
近年は視聴率の低下も指摘されていたが、いまだに国民の半数が視聴しているといわれる“お化けコンテンツ”である。
そして今年の音楽祭には、イブラヒモビッチがゲスト出演をすることになった。まず芸能ゴシップ誌『CHI』が、昨年12月30日に主催者側と出演契約を結んだと報道。
1月26日のコッパ・イタリア準々決勝インテル戦でロメル・ルカクと激しい口論になった件でテレビ局が難色を示したとも噂されたが、2月9日に主催者側が正式にゲスト出演を発表。イブラヒモビッチも公式SNSで「準備をしておけ。新たな記録を作るぞ」などと、自らの出演と成功に意欲を示した。
5日間のチーム離脱が確定
もっとも、チーム側にとっては痛い部分もある。主催者側からは5日間の全日程参加が確約され、その間チームはイブラヒモビッチを手元に置いてトレーニングを積むことができなくなるからだ。
地元紙によれば、3月3日のウディネーゼ戦、7日のエラス・ベローナ戦には出場する方向だが、その間の扱いがどうなるかは不透明だ。ミラノからサンレモまではおよそ300kmの距離がある。通うのはまず不可能なので、現地に滞在してコンディションをキープさせる方向なのだという。
サッカー関係者からの反応は複雑だ。かつてミランで監督を務め、ユベントス時代の恩師であるファビオ・カペッロ氏は、衛星テレビ局『スカイ・スポーツ』に対して「私ならこんな大変な時に外には出さない。クラブから給料が払われているなら、クラブにもそのファンにも敬意を払うべきだ。だいいち『勝ちたい』と言っていた人間がこんな出演オファーを受け入れるなんて矛盾じゃないのか」と批判した。
一方、ミランのパオロ・スカローニ会長は「彼は一流の選手であるとともに一流のプロフェッショナルだ。あらゆることに彼なりの筋を通している人物が勝手なことをするはずがない。ミランへの貢献に努めてくれるだろう」と理解の姿勢を示した。
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Profile
神尾 光臣
1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。