2020年はコロナ禍の影響もあって忘れられない1年となった。そんな2020年を振り返り、『BBC』が興味深いデータや珍事を持ち出して「もう1つのアワード」を特集しているので紹介したい。
オカンポスはGKとして受賞
敬意を欠く「ディスリスペクト賞」に選ばれたのはバイエルンのセルジュ・ニャブリだ。元アーセナルのウインガーは、2019年10月のUEFAチャンピオンズリーグ(CL)でガナーズの宿敵であるトッテナムから4ゴールを奪った。さらに同選手は決勝トーナメントに入ってもゴールを決め続け、準決勝のリヨン戦では2ゴールでチームの勝利に貢献。これでニャブリは、古巣アーセナルが過去のCL準決勝で決めた総得点(2006年、2009年に1点ずつ)に1試合で並んでしまった。
そんなニャブリには“黒歴史”があり、アーセナル時代の2015-16シーズンにトニー・ピュリス率いるウェストブロミッチに貸し出されたことがある。ピュリスは「彼がウェストブロムにいたなんて驚きだね。当時はまったくコンディションが上がらず、U-21チームの試合で途中交代させられていた」と『Sky Sports』で振り返ったそうだ。結局ニャブリは、ウェストブロムでリーグ戦1試合にしか出場できず、シーズン途中にアーセナルに送り返された。
「混乱のGK賞」に選ばれたのは、サンプドリアのエミル・アウデロとセビージャのヤシン・ブヌだ。現代フットボールにおけるGKの役割はいつになく複雑だが、2020年に欧州5大リーグで「アシスト」と「オウンゴール」の両方を記録したGKは前述の2人だけだという。
「漂流賞」に選ばれたのは昨シーズン後半にアストンビラに在籍していたGKペペ・レイナ(現ラツィオ)。チームを降格の危機から救うために加入したレイナは、確かにチームを残留に導いたが、12試合で20失点を喫した。しかも、そのうち2点はペナルティエリア外にいる時に喫したものだという。
「緊急サービス賞」は、7月のエイバル戦で急遽ゴールマウスを守ることになったセビージャのMFルーカス・オカンポス。同試合でゴールを決めていたオカンポスは、負傷したGKに代わってゴールを守ると、終盤にエイバルの猛攻をしのいでチームを勝利に導いた。終了間際、1点を追うエイバルはGKマルコ・ドミトロビッチまでゴール前に上がって総攻撃。するとそのGKドミトロビッチの元にボールがこぼれてきた。そしてGKのシュートを、本来はフィールドプレーヤーのGKが止めるという珍しい光景が見られた。
名前に「ワクチン」が入る選手とは?
「炭水化物の摂取賞」はウェストハムのMFデクラン・“ライス”ではなく、ウディネーゼのイタリア代表FWケビン・“ラザーニャ”。同選手は2020年、3月にリーグが中断するまでの2カ月間で1得点だったが、再開後には5試合で6ゴールと大爆発。しかし、今季は開幕9試合にノーゴールで「ラザーニャが少し乾いてしまった」と揶揄されている。
「運に見放された賞」はレアル・ソシエダからエイバルにローン中の左SBケビン・ロドリゲスだ。2020年の欧州5大リーグで「アシスト0」の選手の中で、最多となる31回のチャンスを演出したのが彼だという。
「オン・オフ賞」はベローナのFWアンドレア・ファビッリ。10月のユベントス戦では、54分に投入されて59分に先制点をマークするも、61分にケガで交代を余儀なくされた。記録に残っている限り、「途中出場、ゴール、途中交代」を10分以内で達成した選手はセリエAでは史上初だとか。
「希望賞」はラツィオのMFだ。2021年は「vaccine(ワクチン)」に期待が集まるが、欧州5大リーグで名前に「vaccine」のアルファベットがすべて入っており、2020年に2アシスト以上記録した選手は1人しかいない。それがラツィオのセルビア代表MFセルゲイ・ミリンコビッチ・サビッチ(Sergej Milinkovic-Savic)だという。
2021年のフットボール界は果たしてどんな1年になるのか。そして、どんな珍事が待っているのだろうか……。
Photos: Getty Images
Profile
田島 大
埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。