22-23欧州各国リーグ総括
プレミアで監督交代続出の謎。ピッチ内外で求められるリーダーの資質に迫る
[特集]
新時代の監督トレンドで読み解く
22–23欧州各国リーグ総括
22-23シーズン開始早々にチェルシーの監督を解任されたトゥヘルが最後はバイエルンの監督としてマイスターシャーレを掲げた。プレミアリーグでは史上最多となる14回の監督交代が起きるなど、現代の監督は短期的な結果を求められながら、同時に長期的な視点でチームを強くしなければならないという困難な要求を突きつけられている。
ピッチ外では外国資本の参入で意思決定層のグローバル 化が常識となり、ピッチ内でもコーチングスタッフの拡大と各領域の専門化が進み、トレーニングメソッドも日々発展している。変化を続けるサッカークラブの根幹を支えるリーダーに求められる能力とは何なのか?――22-23シーズンの欧州サッカーを「監督」を軸に総括する。
[対談]レナート・バルディ×片野道郎
駒を動かす「トレーナー」ではなく、
環境を用意する「ファシリテーター」
現場で感じた監督トレンドの変化
ENGLAND|PREMIER LEAGUE
年齢や国籍を問わず「攻撃志向」が大半に
マネージメント術にも強まる“ペップ色”
◯マンチェスター・シティ+ペップ・グアルディオラ
すべてはビッグイアー獲得のために――
なりふり構わず戦略的に戦った7年目
◯アーセナル+ミケル・アルテタ
アルテタ・サッカーの「自己紹介」は完了
あとは“頂点”に届くまで積み上げるだけ
◯マンチェスター・ユナイテッド+エリック・テン・ハフ
名門復活作業初期の指針をカウンター重視に
支配率より「効率」、勇敢にして賢明な判断
◯リバプール+ユルゲン・クロップ
「衰退」の前半戦を経て指揮官が講じた策
アーノルド“偽SB”化が当人とチームを救う
◯トッテナム+アントニオ・コンテ
3バックに生き、3バックに死したコンテ
空中分解の最大の原因はウイングバック
◯チェルシー+グレアム・ポッター
持ち駒の能力以上のチームを作る新監督が…
人員過多の環境で自らの色を浸透させられず
チェルシーの“狂乱”は、なぜ起きた?
投資家視点で見るプレミアリーグの監督事情
◯ブライトン+ロベルト・デ・ゼルビ
三笘が示した「ブライトン対策」への答え
“デ・ゼルビ・ボール”のアップデートは続く
◯ニューカッスル+エディ・ハウ
功を奏した苦肉の策で前半戦は3位
堅守に頼らない月間22得点の横綱相撲も
◯アストンビラ+ウナイ・エメリ
試合前ミーティングは2時間超え!
古豪を立て直した“分析オタク”の本気
ITALY|SERIE A
監督交代の減少、マンツーマンハイプレスの広がり、
世代交代の萌芽――激変したカルチョの監督像
◯ナポリ+ルチャーノ・スパレッティ
「縦」「裏」を常に意識した戦術面の手腕と
ナポリの“すべて”を一つにしたメッセージ
◯インテル+シモーネ・インザーギ
負傷、連戦、批判を乗り越えて
“型”を貫き通したマネージメント術
◯ユベントス+マッシミリアーノ・アレグリ
オープンプレーでのゴール期待値の低さ、
セリエAのトレンドに反する結果主義への是非
◯ミラン+ステファノ・ピオーリ
「若手育成」のクラブ戦略に合致
“息子”たちを支えた家族的マネージメント
◯ラツィオ+マウリツィオ・サッリ
ルイス・アルベルトの重宝にみる
「戦術原理主義」「2タッチ教」からの脱却
◯ローマ+ジョゼ・モウリーニョ
マネージャーからモチベーターへ
“スペシャル・ワン”が 迎えた「新しい瞬間」
l’Ultimo Uomo
ポジショナルプレーの時代は終わろうとしているのか?
SPAIN|LIGA ESPAÑOLA
新しさが評価されない「保守的」なお国柄ゆえに
「トレンドがない」のが特徴
◯バルセロナ+シャビ・エルナンデス
ボールプレーをこなすのではなくフットボールを「生きる」
「黄金の勝利」を手にした“ウノゼロのバルサ”の実像
◯レアル・マドリー+カルロ・アンチェロッティ
上積みなき戦力で攻守バランスをハイレベルに維持
これぞアンチェロッティのアレンジ力
◯アトレティコ・マドリー+ディエゴ・シメオネ
「サイクル終了」の危機を脱した決定的要因
は期待を一身に背負っていたMFとの訣別
◯ソシエダ+イマノル・アルグアシル
久保建英を躍動させた張本人
状態を見極めたシステム変更が示す慧眼
◯ビジャレアル+キケ・セティエン
戦術も、生き様も常に綱渡り
過激なポゼッションこそがセティエン流
◯ジローナ+ミチェル
今季最大のサプライズチームを躍進させた
攻守に合理的な偽SBによる可変システム
GERMANY|BUNDESLIGA
「ラップトップコーチ」の没個性化で
監督育成は「横ばい」状態に
◯バイエルン+トーマス・トゥヘル
想像を超える混乱の中、マネージメントに奔走
戦術的アプローチには最後まで着手できず
◯ドルトムント+エディン・テルジッチ
クラブを知る指揮官らしいマネージメント
配置+闘争心で積年の課題を克服、優勝に迫る
◯RBライプツィヒ+マルコ・ローゼ
「RBのDNA」たる[4-2-2-2]回帰+
3バック併用で示した自らの進化
◯ウニオン・ベルリン+ウルス・フィッシャー
ブンデス全体に影響を与えた[5-3-2]
持てる力を最大限に引き出しCL出場をつかむ
◯フライブルク+クリスティアン・シュトライヒ
年々増える戦術的引き出し
長期政権を支える指揮官の進化と謙虚さ
◯レバークーゼン+シャビ・アロンソ
逆境を跳ね返す見事な監督デビューイヤー
5バック+能動的な守備で浮上へと導く
FRANCE|LIGUE 1
◯パリ・サンジェルマン+クリストフ・ガルティエ
戦術的な才より、いかに全力を出させるか
PSGは結局、誰が率いても結末は同じ?
◯スタッド・ランス+ウィル・スティル
30歳、リーグ1初挑戦は伊東純也とともに
少年のような情熱、型にはまらない采配
NETHERLANDS|EREDIVISIE
◯フェイエノールト+アルネ・スロット
名門に新しいアイデンティティを確立。
バランス感覚に優れる「ピープルマネージャー」
PORTUGAL|LIGA PORTUGUESA
◯ベンフィカ+ロジャー・シュミット
特徴的だった多彩なサイド攻撃
シュミットの規律とタレントの発想が融合
SCOTLAND|SCOTTISH PREMIERSHIP
◯セルティック+アンジェ・ポステコグルー
Jリーグ時代と同じく「誰が出てもセルティック」
「1試合平均3得点」の驚異的な攻撃力
RUSSIA|RUSSIAN PREMIER LEAGUE
◯スパルタク・モスクワ+ギジェ・アバスカル
モダンな戦術を実践し名門を復権させたのは
無名の若きスペイン人指揮官だった
[総括コラム]
新時代の監督に求められるリーダーシップを考える
REGULARS
CALCIOおもてうら ●片野道郎
– パッラディーノとチアゴ・モッタ、セリエA新世代監督がもたらした新たな価値観
戦術リストランテ ●西部謙司
– グリーズマンを軸にした全方位型アトレティコ
ドイツサッカー誌的フィールド ●ダニエル・テーベライト
– デュッセルドルフが打ち出す“無料観戦計画”への反応
ディープスロート 内部情報が語るレアル・マドリー ●ディエゴ・トーレス
– 会長の口出しで大敗も、人種差別騒動で反省は…
TACTICAL FRONTIER進化型サッカー評論 ●結城康平
– スモール・パートナーシップ――グアルディオラが探求する「創造性」の新しい解釈
サッカーを笑え ●木村浩嗣
– ビニシウスへの人種差別、国際問題化で撲滅に向かうか?
連載コラム
ENGLAND ●山中 忍/ FRANCE ●小川由紀子
NETHERLANDS ●中田 徹/ RUSSIA ●篠崎直也
BRAZIL ●沢田啓明/ URUGUAY ●Chizuru de Garcia