世界最高峰プレミアリーグの事情に見る、放映権料収入へのダメージ
【コロナ禍で揺らぐフットボールバブル】#2
コロナ禍によるシーズン中断により、リーグおよびクラブは財政面で大打撃を受けることとなった。中でもクラブ収入の大きな比率を占め、無観客でもリーグを再開させる要因の1つとなったのが、増大の一途をたどり莫大な額に膨れ上がっている放映権料収入だ。
想定外の有事は、放映権料契約および収入にどういった影響を与えたのか。世界最高の放映権料収入を誇るイングランド・プレミアリーグのケースについて、『タイムス』紙のガリー・ジェイコブ記者に解説してもらった。
去る5月28日に6月17日からの今季再開を発表したプレミアリーグ。まずは中断前に未消化だった、マンチェスター・シティ対アーセナルとアストンビラ対シェフィールド・ユナイテッドの2試合が行われ、19日開催のノリッジ対サウサンプトンとトッテナム対マンチェスター・ユナイテッドで、第30節の口火が切られることとなった。同時に、最終的には数試合のみとなった中立スタジアム開催の是非をはじめ、様々な議論にも終止符が打たれる。国内外の放送局を相手にした、払い戻しをめぐる討議もその1つだった。
テレビ放映権料の一部返金とその規模は、プレミアの20クラブが、リーグ中断当初からそろって今季の打ち切りを避けたがっていた理由の1つでもある。そもそも、プレミア勢の財務事情は、破格の放映権収入に潤う「金満リーグ」像とは裏腹に、「余裕」はもちろん、「健全」とも言いがたい。昨季は、半数を超すクラブが赤字経営。新型コロナウィルス感染の第2波到来を回避すべく、ソーシャルディスタンスが求められ続ける中、来季も、無観客試合や入場数制限によるチケット代収入の激減が予想されてもいる。その上、今季の中断が決まった3月13日の時点では、そのまま再開不能となれば、7億6200万ポンド(約1029億円)もの放映権料返金を強いられる可能性があった。……