ストライカーが絶滅する未来?
モダンサッカーの中で多様化している役割と、その一方で変わらない特殊性――今なお特別でありながらも変化しているストライカーという存在は、この先どこへ向かっていくのか。初の著書『「サッカー」とは何か 戦術的ピリオダイゼーションvsバルセロナ構造主義、欧州最先端をリードする二大トレーニング理論』で「サッカーとは何か」を追求した林舞輝監督に考えてもらった。
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サッカーにおいて「ゴール」が最も価値の高いプレーである以上、ストライカーとGKだけは他のポジションや役割と違い、永遠に必要とされ続ける。良いGKが不必要になる時代が永久に来ないのと同様に、時代が変わろうと戦術のトレンドが変わろうと、ストライカーは最も貴重な存在であり続け、変わることはないだろう。では、ストライカーに必要な能力とは何なのか?
それは至って単純で、ペナルティエリア内で仕事をすることだ。具体的には、「1.ゴール前で違いを生み出し、2.そこでシュートを打つことができ、3.高確率でゴールを決める」という仕事である。つい決定力が高いというのが一番先に頭に浮かぶが、それだけではない。そもそも、相手が死に物狂いで体を張ってくる最後のエリア内では、そう簡単にシュートを打てるものではない。シュートを打つというそれだけのプレーでも非常に難しい。まず、このエリアでシュートに持ち込める能力が必須なのだ。どんなに決定力の高い選手でも、そもそものシュートに持っていける回数が少なければ、得点数は積み上がらない。シーズンで30ゴール奪うための絶対条件は、エリア内で30本以上シュートを打つことであり、この時点で普通はなかなかハードルが高いのだ。……
Profile
林 舞輝
1994年12月11日生まれ。イギリスの大学でスポーツ科学を専攻し、首席で卒業。在学中、チャールトンのアカデミー(U-10)とスクールでコーチ。2017年よりポルト大学スポーツ学部の大学院に進学。同時にポルトガル1部リーグに所属するボアビスタのBチームのアシスタントコーチを務める。モウリーニョが責任者・講師を務める指導者養成コースで学び、わずか23歳でJFLに所属する奈良クラブのGMに就任。2020年より同クラブの監督を務める。