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【完全版】対談:中西哲生×林舞輝「決まるシュート」の方程式

2020.05.27

日本人ストライカー改造計画#8】

再現性を持ったメソッドとして、久保建英や中井卓大をはじめとした選手たちに「得点能力」を授けているパーソナルコーチ、中西哲生。その独自メソッドに奈良クラブの林舞輝監督が迫った本誌対談には大きな反響があった。そこで雑誌ではページ数の関係で載せられなかった「具体的な中西トレーニング」を加えた完全版をWEBで特別公開!ストライカー育成の新たな可能性にぜひ触れてほしい。

※期間限定全文無料公開は終了しました。

サッカーには「決まるシュート」がある

「奈良クラブのアカデミーに来ていただくようになってから、僕は哲生さんのトレーニングを間近に見たり実際にプレーしてみたりしていますが、あらためて指導者としての哲生さんの経歴や活動、始めたきっかけなどを教えていただけますか?」

中西「もともと自分はパーソナルコーチをやろうと始めたわけではなくて、たまたま中村俊輔選手から『哲生さん世界中の試合を見ているので、もし僕がやっていないようなプレーがあったら教えてください』と彼がセルティックにいる時に言われたのがすべての始まりでした。その仕事を引き受けたんですけど、冷静に考えてみたらまず中村俊輔という選手が何ができてて何ができていないかを理解していないと、彼ができていないこと、やっていないことなんて送れないじゃないか、と。だから、まず中村俊輔分析を始めました。彼のフォーム分析、プレー分析。プレー映像をひたすら見まくりました。そしたら、彼のフォームは他の日本人のフォームとは全然違うことがわかったんです。そして、中村俊輔選手のフォームはほとんど全部が海外の一流選手のフォームと近いものだった。そうやって海外の一流選手のフォームを見てるうちに、おや? と思ってきて。これはフォームをちゃんと解析して仕組みを理解して再構築すれば、もしかしたら他の日本人選手も中村俊輔選手と同じようにできるんじゃないか、と。それから、一流選手のフォームを解析するということを始めました」

「ただ説明するのではなく、その仕組みから理解していこう、と」

中西「そう、プレーの仕組みも理解する、で、なぜそうしたかっていうと、仕組みがわかればそれを選手に教えられるはずだと思ったので、とにかく『分解する』『分ける』ということをしました。で、フォームっていうのは、機械系メカニズムなので、仕組みを理解して分ければ絶対に分解できる。それをもう一回再構築すれば、再現性を持ってそのプレーができるようになる。そのために、中村俊輔選手がやっていないようなプレーを見つけて、そのフォームを分けて再構築する映像を彼に送ったんです。そうしてるうちに生まれたプレーで、忘れもしないプレーがあって、それがスコットランドダービー、レンジャーズ戦でのゴール」

2008年の宿敵レンジャーズとのダービーで炸裂した中村俊輔の一撃(00:26~)

「左足でアウトサイドに回転かけて、ビューってもう音が聞こえるような速く美しい弾道でゴールネットに突き刺さったやつですね!」

中西「これは実は、マジョルカでセルビア代表のヤンコビッチが右足でやってたんですよ。これは論理的だなと、解析して映像を彼に送ったんですよ。で、しばらくした時、家で彼の試合を見てたら、『あれじゃん!』ってなって。だから、彼には何も教えてないし、映像を渡してただけなんだけど、勝手にやってできちゃったんですね。そんなことをしているうちに、サッカーには絶対的に決まりやすいシュートがあるんじゃないかと考え始めました。絶対に相手が反応しづらいとか、そういう論理として決まりやすいシュートがあるはずだ、それをはじき出してやろう、となったわけです」

マジョルカでブレイクしたヤンコビッチ(右)は、その後パレルモ、ジェノア、ベローナを渡り歩き、2016年に引退している

演繹法的アプローチと帰納法的アプローチ

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日本人ストライカー改造計画

Profile

林 舞輝

1994年12月11日生まれ。イギリスの大学でスポーツ科学を専攻し、首席で卒業。在学中、チャールトンのアカデミー(U-10)とスクールでコーチ。2017年よりポルト大学スポーツ学部の大学院に進学。同時にポルトガル1部リーグに所属するボアビスタのBチームのアシスタントコーチを務める。モウリーニョが責任者・講師を務める指導者養成コースで学び、わずか23歳でJFLに所属する奈良クラブのGMに就任。2020年より同クラブの監督を務める。