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モウリーニョはなぜデータを否定するのか?

2020.03.23

 「モウリーニョはユナイテッドの監督に就任してまもなく、GPSというテクノロジーの利用をストップした。プレミアリーグのチームの中でGPSを使っていなかったのは、マンチェスター・ユナイテッドのみである」

 モウリーニョがユナイテッドの監督を解任された頃、現地ではモウリーニョやユナイテッドへの批判に混じり、そんな報道がされた。「モウリーニョはテクノロジーによるデータよりも自分の“勘”を頼りにした」と、ある種の揶揄とも受け取れるような表現もされたが、これは何とも不思議な話である。

 もはや言わずもがなだが、モウリーニョと言えば「サッカーの学問化」によって一流監督まで登り詰めた「ラップトップ監督」の先駆者である。彼はサッカー選手としてのキャリアはないが、そのアカデミックな知見や幅広いサッカーとスポーツ科学の理解によって、「元選手」とはまったく違ったアプローチで世界一にたどり着いた。リスボン大学のスポーツ科学部を非常に優秀な成績で卒業したことはもちろん、彼自身がインタビューで「選手としてのキャリアがないにもかかわらず世界一の監督になれた理由は何か?」という問いに対し、「スポーツ科学の理解と知識、運動生理学や解剖学、統計学、テクノロジー、心理学、バイオメカニクスや栄養学など、サッカーとスポーツに関するアカデミックな知見を広げる努力をしてきたこと」と述べていた。では、そんなモウリーニョがGPSデータという、もはや世界のサッカー界では誰もが使っている「必需品」となったテクノロジーを否定するようになったのは、なぜなのだろうか?……

Profile

林 舞輝

1994年12月11日生まれ。イギリスの大学でスポーツ科学を専攻し、首席で卒業。在学中、チャールトンのアカデミー(U-10)とスクールでコーチ。2017年よりポルト大学スポーツ学部の大学院に進学。同時にポルトガル1部リーグに所属するボアビスタのBチームのアシスタントコーチを務める。モウリーニョが責任者・講師を務める指導者養成コースで学び、わずか23歳でJFLに所属する奈良クラブのGMに就任。2020年より同クラブの監督を務める。