リアルタイム分析はサッカーをどう変えるのか?
18-19CL総括で、欧州最高峰の大会の戦術トレンドとして極限まで進化したリアルタイム分析により試合中の選手の「戦術適応能力」が格段にアップしたことに注目したのが、本誌でお馴染みの奈良クラブ・林舞輝氏だ。そこから一歩進んで、リアルタイム分析が変えるサッカーの未来を考察してもらった。
2種類のリアルタイム分析
リアルタイム分析には、大きく分けて2種類ある。
1つは「定量分析」、つまり数字で量れるものの分析である。シュート本数、パス本数、ドリブル成功率、ポゼッション率、ヒートマップ等がこれにあたる。これにより、主観の入らない正確な数値でその試合の状況を客観的に把握することができる。
もう1つが、「定性分析」である。これは、数字で量れないものによる分析だ。一番シンプルなものでいうと攻撃と守備時の各チームのフォーメーションや噛み合わせ、個人個人の選手の特徴の把握だろう。攻撃・守備・ポジティブトランジション・ネガティブトランジションの各局面におけるプレー原則、守備時のラインの高さの設定やプレスのスイッチを分析することも「定性分析」になるだろう。数字で推し量れないものを言語化できる一方で、主観的に分析を行うため、分析官やコーチングスタッフの中で同じ現象や問題に対し異なる見解が生まれてしまうことが、しばしばあり得る。……
Profile
林 舞輝
1994年12月11日生まれ。イギリスの大学でスポーツ科学を専攻し、首席で卒業。在学中、チャールトンのアカデミー(U-10)とスクールでコーチ。2017年よりポルト大学スポーツ学部の大学院に進学。同時にポルトガル1部リーグに所属するボアビスタのBチームのアシスタントコーチを務める。モウリーニョが責任者・講師を務める指導者養成コースで学び、わずか23歳でJFLに所属する奈良クラブのGMに就任。2020年より同クラブの監督を務める。