ストーミング総論:もう一つの 「美しく面白いフットボール」
リバプールがストーミングで、シティがストーミングでない理由
サッカーの5つの攻略法は「1.自分」「2.相手」「3.ボール」「4.スペース」「5.時間」である、というのが奈良クラブの林舞輝氏の持論。その中で、彼はポジショナルプレーを「4.スペース」、ストーミングを「5.時間」の攻略法と位置づけている。では、時間の攻略とは一体何なのか? ストーミングとは単なるサッカースタイルではなく、サッカーをどう攻略するのが美しく面白いと感じるか、という哲学の問題なのである。
現代サッカーは、ここ数年で急激に変化している。その中で文字通りサッカー界に「嵐」を巻き起こしているのが、「ストーミング」という概念である。獰猛に襲いかかるプレッシング、奪われた瞬間にピラニアのようにボールに群がるゲーゲンプレス、奪ったや否や脅威の速さでボールと人をゴール前に送り込み相手を恐怖に陥れるカウンターアタック……。彼らの試合を見ていると、まさに「カオス」を体現している嵐そのものである。
時間の攻略――90分の制限時間内で何をする?
「ストーミング」という名前をつけ始めたのは有名ジャーナリストのサイモン・クーパーだが、彼が命名するより前からそのような一種の派閥が欧州の覇権を握り始めていたのは、誰もが薄々気づいていた。「スペースの支配」に重きを置くグアルディオラをはじめとするポジショナルプレーとは相容れないような派閥であり、あの全世界が畏敬の念を抱いたバルセロナを「つまらない」と揶揄し、「スピード」と「時間」にサッカーの美を見出そうとしている派閥である。……
Profile
林 舞輝
1994年12月11日生まれ。イギリスの大学でスポーツ科学を専攻し、首席で卒業。在学中、チャールトンのアカデミー(U-10)とスクールでコーチ。2017年よりポルト大学スポーツ学部の大学院に進学。同時にポルトガル1部リーグに所属するボアビスタのBチームのアシスタントコーチを務める。モウリーニョが責任者・講師を務める指導者養成コースで学び、わずか23歳でJFLに所属する奈良クラブのGMに就任。2020年より同クラブの監督を務める。