反ゲームモデル主義という、もう一つの未来
ここ1、2年でようやく日本でもその存在が知られてきたゲームモデル。ところが、欧州のトップレベルに目を向ければ、ゲームモデル主義に対する逆風が吹いているという。ゲームモデルとは何かを解説してくれた林舞輝氏に、「反ゲームモデル主義」席巻の理由を詳らかにしてもらおう。
「ゲームモデル」に深い興味を持ち、学び、「ゲームモデル至上主義」へ傾倒しつつあるみなさんに、悪い知らせがある。ジョゼ・モウリーニョの成功とバルセロナの黄金時代によってある意味で完成形に達したゲームモデル主義だが、もはや現代サッカーでは効力を失いつつある兆候が見られているのだ。
それは、近年の欧州サッカーの勢力図を考えれば明らかだろう。CL3連覇という偉業を果たしたレアル・マドリー。ロシアW杯で優勝を飾ったフランス代表。彼らにゲームモデルはあっただろうか? 一般的に、ゲームモデルがあるチームというのは、例えば言語化できなくともなんとなく「こんな感じのサッカー」というイメージが容易に浮かぶ。ペップ時代のバルセロナ、モウリーニョ時代のチェルシー、ベンゲルのアーセナル、ファーガソンのユナイテッド。強者には常に「~らしいサッカー」と形容し誰もがイメージできるような確かなモデルがあった。
だが、ジダンのレアル・マドリーとロシアW杯でのフランス代表の戦いぶりを思い浮かべた時、明確なモデルがイメージできるだろうか? できないだろう。彼らはいわゆる、新しいタイプの「ゲームモデルを持たないチーム」だ。そして、ここ数年はその「ゲームモデルのないチーム」が世界の頂点に君臨しているという確かな事実がある。
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Profile
林 舞輝
1994年12月11日生まれ。イギリスの大学でスポーツ科学を専攻し、首席で卒業。在学中、チャールトンのアカデミー(U-10)とスクールでコーチ。2017年よりポルト大学スポーツ学部の大学院に進学。同時にポルトガル1部リーグに所属するボアビスタのBチームのアシスタントコーチを務める。モウリーニョが責任者・講師を務める指導者養成コースで学び、わずか23歳でJFLに所属する奈良クラブのGMに就任。2020年より同クラブの監督を務める。