OKクーペル、4強、いや優勝を。名将到来ウズベキスタンの野心
【アジアカップ2019特集 現地メディアが伝える変革するアジア列強の今 #6】ウズベキスタン代表
2018年8月、ウズベキスタンサッカー界に転機が訪れる。あのエクトル・クーペルが代表チームの新監督に就任したのだ。
直前までエジプト代表を率いてロシアワールドカップを戦っていた老将は、就任後およそ1カ月を合宿に費やしたのを皮切りに、4カ月間で実に4度の合宿を実施。本大会までに6度の親善試合を戦って2勝2分2敗という成績を残した。韓国やイランといった格上相手にこそ敗れたものの、シリア、レバノンと引き分け。北朝鮮とカタールには勝利を収めている。最終合宿ではあえて親善試合を行わなかったが、それは直前でのケガを避ける狙いがあったゆえ。1月2日にドバイに到着したチームは、良い雰囲気の中で準備を進め、 オマーンとのアジアカップ初戦(2-1で勝利)を迎えた。
このアルゼンチン人監督はバレンシアやインテルを指揮した時のように、どちらかと言えばチームに守備的なプレーを植えつける指導者として知られているが、ウズベキスタン代表は守備的なフットボールをプレーしたことがほとんどなかった。当初は国内のサッカーファンや記者から不信と不満を買っていたが、私たちが親善試合で目の当たりにしたのは、クーペルのチームがオープンで攻撃的なフットボールをプレーする姿だった。例えばカタールとの対戦においては、相手のシュート数が5本であったのに対し、ホワイトウルブス(ウズベキスタン代表チームの愛称)は11本のシュートを撃っている。そのうち6本を枠内へと飛ばしていたのだ。
クーペルにはチームへの理解を深めながら彼のスタイルと哲学を植え付ける十分な時間があったため、ウズベキスタン国民はイラン、韓国、日本、オーストラリアといったアジアの強豪国相手に勝利することを待ちわびている。指揮官に課せられている最も重要なタスクは2022年のワールドカップに出場することだが、今回のアジアカップにおいて、新体制の代表チームは秘めているポテンシャルを惜しみなく発揮することだろう。
経験と若きアジア王者が融合
ウズベキスタン国民は、クーペル率いるチームが2011年大会での4位入賞以上の結果を残すことを期待している。先日の記者会見でクーペルも「ウズベキスタンは優勝を目指して戦う」と明言。彼が名将として知られているのはいかなるチームでも変貌させ、スターダムを駆け上がらせてきた実績があるからだ。今大会は彼にとってもチャンスとなるだろう。
ファンも勝利を熱望している。過去6度に渡ってワールドカップの予選を戦ってきたが、突破すべき6度すべての挑戦で不本意な結果に終わっているからだ。ウズベキスタンサッカー界ではクーペルの下でアジアカップ決勝までたどり着き、優勝を果たすことが渇望されている。
今大会を戦うウズベキスタン代表の平均年齢は27歳となっており、これは歴代のアジアカップに出場したチームの中でも“最も経験豊富なチーム”だ。その一方で、このチームには昨年のAFC U-23選手権を制したニューヒーローたちもいる。この黄金世代の中で、特に注目が集まるのはオディルジョン ・ハムラベコフだ。
1996年生まれのMFは2017年にUAEとの親善試合でA代表デビューを果たし、今大会までに9度ピッチに立っている。AFC U-23選手権では全出場選手の中で最も価値がある有望株として名を馳せた。CB、守備的MF、セントラルMFと3つのポジションでプレーできる多才さに加え、自信を持ってボールを収めながらピッチ中央で落ち着いて判断を下す、若さに見合わぬテクニックとインテリジェンスを兼備したブレイク候補だ。
チームへの期待は大きく高まっており、専門家も優勝候補の一角として挙げているほど。もちろん、私もウズベキスタンが頂点に立つことを願っている。
もっとも、優勝候補の最右翼はイランと韓国だと思うが…。
AFCアジアカップUAE2019 テレビ放送予定
地上波放送:テレビ朝日系列にて生中継!
https://www.tv-asahi.co.jp/soccer/asiancup2019/
BS放送:NHK BS1にて生中継!
https://www1.nhk.or.jp/sports2/daihyo/index.html
Photos: Getty Images
Cooperation: Naoya Shibamura
Translation: Masatoshi Adachi
Profile
ニゴラ アビドバ
スポーツ雑誌『The Mag Magazine Sports Winnter』を中心に、各ウズベキスタンスポーツメディア(雑誌、新聞、インターネットメディア等)へとサッカーやその他スポーツの記事を寄稿している。